研究課題/領域番号 |
19K13594
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研究機関 | 釧路公立大学 |
研究代表者 |
千田 航 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (80706747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家族政策 / フランス / 福祉国家 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年の福祉国家で指摘される「再分配のパラドクス」と「社会的投資のパラドクス」という2つのパラドクスについて、これらが家族政策の政策過程にも表れているのかを2010年代のフランス家族政策から検討することが目的である。 ここでは、2つのパラドクスの影響から現代の家族政策において「適用除外の政治」が発生しているという仮説を立てている。非正規雇用などを中心に雇用が不安定になるなか、貧困率の上昇に直面している政府であれば、家族政策で社会的投資の側面が強い保育サービスよりも生活の経済的支援の足場となる現金給付(フランスでは家族手当)を重視することになるだろう。その際、再分配への支持が高まるならば、政権与党はこうした政策を打ち出して支持率の上昇を期待することになる。ただし、既に普遍主義を実現している家族手当は部分的に削減しても再分配の支持には影響しないことが指摘されている。一方で、予算削減にも直面する政府は家族手当を削減することも考えるが、所得移転の規模が大きいほど貧困率は低くなると想像できるため、高所得層に限り給付額を削減するという「適用除外の政治」を選好することになるといえそうである。 2021年度は、サービス保育サービス給付を削減できないことや現金給付の対象を最低所得保障にまで広げ、日本行政学会で「保育サービスと中央・地方関係―フランスにおける供給体制の集権化?」と題する報告を行うだけでなく、琉球労働法研究会での報告を行った。そのほかにも、成果公表に向けて継続的に文献・資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果公表に向けた準備を進めるため、学会や研究会などで報告を行うことができた。 その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響からフランスでの現地調査が困難になり、文献調査を中心とする研究計画へと変更することになった。 報告や文献調査を通じて、再分配のパラドクスと社会的投資のパラドクスの帰結としての「適用除外の政治」の発生について実証的な解明ができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
より詳細な検討が必要であるため研究期間を1年延長することにしたが、研究目的の達成に向けてはおおむね順調に進展しているため、最終的な成果公表に向けた取り組みを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響によるフランスでの調査が困難となった。しかし、研究目的を達成するためにフランスでの調査は必要であると考えているため、次年度での調査の可能性を残すことにした。 フランスでの調査が次年度の使用計画となるが、実行できるかは予断を許さないため、資料収集や国内での研究打ち合わせ・研究報告などにも視野を広げて研究目的の達成を試みる。
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