研究課題/領域番号 |
19K13595
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
白谷 望 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (40780119)
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研究期間 (年度) |
2020-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | モロッコ / 君主制 / 権威主義体制 / 選挙 / 議会 / 政党 |
研究実績の概要 |
2022年度は、本研究課題に関係する複数の論文を執筆した。まず、権威主義的君主制下における議会の機能を明らかにするため、モロッコにおける国王・首相・議会の関係に関して、執政府長官である首相と立法府である議会と併存しつつも、国王がより強い執政権と立法権を有していることを論文にまとめた。 次に、モロッコ君主制の支配の正当性を支えるインフォーマルな制度として、伝統的・宗教的儀礼である「忠誠の誓い(バイア)の儀礼」に注目し、国王の演説の変遷と合わせてその機能を検討した。この英語論文では最終的に、モロッコでは①フォーマルな制度としての議会と選挙、②インフォーマルな制度としての宗教儀礼が、国王と国民を繋ぎ、王制の正当性を支える両輪として機能していることを明らかにした。 加えて、近年の女性王族の社会での活躍に焦点を当て、現代モロッコにおける女性王族の婚姻、血統および社会的地位を分析した。 また、近年の中東・北アフリカ諸国の政治的特徴として、2010年の「アラブの春」以降のイスラーム主義政党の躍進が挙げられるが、モロッコの「公正開発党」と比較されることの多いチュニジアのイスラーム主義政党「ナフダ党」の政治獲得とその後の葛藤に関する論文を執筆した。 このように、当該年度では、これまでの研究を論文としてまとめ、発表することに注力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は新型コロナウイルスの感染状況が少し落ち着いたこともあり、モロッコでの調査を行うことが可能となったため、これまでの研究で不足していた資料等を現地で収集することが出来た。そこから得られた情報を追加して複数の論文を執筆し、既に出版が決まっていることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる2023年度は、既に学会で口頭発表を行ったモロッコの王党派政党に関する論文を執筆し、投稿することを目標とする。具体的には、モロッコの権威主義的君主制において、その正当性を支える制度である選挙では、中道として王党派政党が連立に参加することが前提とされ、それによって「民主主義的」と捉えられる政権交代が可能となっていることを実証する。 また、本研究課題において残された課題を整理して2024年度以降の研究課題の構想をまとめ、早い段階でその計画を練り上げることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、当初予定していた現地調査のほとんどが行えなかったため。2023年度は、モロッコにおける現地調査に加え、海外から研究者を招聘して国際シンポジウムを開催する予定である。
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