研究課題/領域番号 |
19K13597
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研究機関 | 東洋学園大学 |
研究代表者 |
小林 大祐 東洋学園大学, 人間科学部, 准教授 (40802723)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 住民投票 / 地方議会 / ドイツ / 市長 / 首長公選制 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、本年度も新型コロナウイルス感染症の影響によって、当初の研究計画を変更したうえで次の2つの作業に取り組んだ。第1は、地方自治制度改革における市長公選制と住民投票制度の位置づけについての整理であり、研究計画の変更により2年目に保留していた研究である。いずれの改革も市民の声を直接反映させることに関連したものであるが、改革の背景は異なる。前者は行財政改革に端を発する一方で、後者は政治不信に端を発するものである。したがって、制度改革に伴う政治構造の変容は必ずしも明確な目的に沿ったものではなく、一定の偶発性を帯びていることが確認できた。 第2は、住民投票の過程に至った事例から政治構造を考察する研究であり、ザクセン州を中心とした諸都市を対象とした。市長公選制導入が地方議会選挙の投票率低下に影響した可能性があること、また、住民投票は議会の形骸化をもたらすとの指摘から示されるように、近年では地方議会のプレゼンスが低下しているとの見方が存在する。それに対して本研究では、住民投票や住民発議が地方議会における政党や議員の影響力向上に寄与している可能性が示唆された。住民投票や住民発議に対して、直接的ないし間接的に政党や地方議会議員が関与しているケースが少なくない。これは、議会内での交渉が不利/議会外での交渉、あるいは市民の後ろ盾が有利になると判断された場合、政党や議員はこれらに積極的に関与しようとするからであり、議会外での政治的交渉の場として機能していることが示唆された。また、住民発議によって議会外でアジェンダを惹起させ、議会内での交渉に導こうとする可能性も指摘された。ただし、本研究は十分な検証に至っていないため、観察数を増やす、あるいは1つの事例をより詳細に検討するなど、引き続き研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初の計画通りに研究を遂行することができていない。渡独して収集する予定であった各種資料や情報が入手できていないこと、電子データ化されていない資料などを国内で調達することが困難であったことから、当初予定していた事例研究が十分に着手できていない状態にある。本来は3か年で研究を完遂させる予定であったことから、進捗は遅れている状況にあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
渡独して資料調達することを念頭に置いた研究計画であるが、新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、次年度も資料収集が叶わない可能性も否定できない。そこで、状況に応じて研究計画を柔軟に設計することとしたい。 次年度の渡独が可能であった場合は、事例数を減少させて、当初の計画に沿った事例研究に取り組む。当初は4つの州を対象としていたが、渡独後の研究期間が限られていることから、ザクセン州、バーデン=ヴュルテンベルク州、ヘッセン州の3つを対象とする。 渡独が不可能であった場合は、1つの事例を丹念に調査検討することが不可能となる。そのため、対象とする事例数を増やし、国内で調達可能な情報を基に比較分析を行うこととする。その際には、バイエルン州とノルトライン=ヴェストファーレン州も対象とし、州内の調査対象都市も増やす。 上述の判断は2022年度の6月末頃を目途とする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、渡独を実現することができなかった。また、当初の研究計画に沿った資料調達は国内では困難であった。その結果、旅費、人件費・謝金、またこの研究に付随する各種の経費を次年度に繰り越すこととした。次年度に状況が改善すれば、当初の計画どおり渡独による資料収集に充てるが、渡独が不可能である場合は、研究計画を変更したうえで、ドイツからの資料調達等の経費として充てる予定である。
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