本年度は前年度までに十分に整理検討が及んでいなかった作業、ならびに研究成果としてまとめる作業を行った。基本的に次の2点となる。 第1は、住民投票をめぐる首長の関与についてである。住民投票にかかる諸制度のハードルが低くなると、首長も住民投票を通じた政治的交渉が行いやすくなると考えられる。そこで、首長が住民投票に対して積極的に関与しているかどうかを検討する作業を行った。具体的には、対象とする諸州の大都市で2000年代以降に住民投票に至った事例を抽出し、これらに触れている地元紙を基礎的な資料として検証した。前年度までに一部の都市を対象として、首長が「直接的」に影響を及ぼしていないことを確認していたが、対象範囲を拡げた今回の調査においても、首長の「積極的」な態度がほぼ見当たらなかった。 第2は、首長のリーダーシップの源泉についてである。首長の制度的な影響力と実際の影響力がねじれていることを前年度に確認したが、この点について、地方議会ならびに助役の構成にも着目して検討した。ドイツの大都市における助役はヘッセン州等の一部を除いて市長のスタッフである一方で、任用には政党の意向が色濃く反映される。これら政治的な回路を通じた影響力も加味し、人口20万人以上の27都市(6州)を対象として比較考察したところ、市長と地方議会議員の選挙のタイミング、市長の立候補の方法、助役制度が制度的な要因として作用していることが示された。 なお、以上に連関した研究成果について、図書への寄稿、学術論文、報告によって公表した/される予定である。
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