研究課題/領域番号 |
19K13604
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
工藤 文 早稲田大学, 政治経済学術院, 日本学術振興会特別研究員 (80779067)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メディア / 中国 / 宣伝 / 計量テキスト分析 / 新聞 / 権威主義体制 |
研究実績の概要 |
2021年度は中国の新聞を対象に計量テキスト分析を行い、学会にて成果を報告した。日本マス・コミュニケーション学会秋季大会において、「『人民日報』における宣伝報道の変化-計量テキスト分析による試み」のタイトルにて共同でポスター報告を行った。半教師あり学習の手法を用いた。分析にはRパッケージのQuantedaを用いた。まずNewsmapを用いて記事を国内・国外・その他の地域に分類した。この上で、LSS(Latent Semantic Scaling)を用いてヒントとなる単語(種語)を設定し記事の分類を行った。『人民日報』の1950年から2020年まで5年おきを対象に分析を行った。 この学会報告では、次の2つの軸を設けて分析を行った。まず、教条的宣伝と国家発展の軸では、教条的宣伝を強調する記事の割合が減少し、国家発展を強調する記事の割合が増加した。分析対象を政治関連の記事に限定した分析でも同様の傾向がみられた。次に、腐敗や汚職に関する記事に限定して分析を行ったところ、腐敗・汚職を批判する記事に比べ摘発の成果を強調する記事の割合が増加した。これらの変化は胡錦涛政権時代からすでにみられることを明らかにした。以上から、党は政治宣伝を通じて党の成果を人々にアピールすることで、人々の支持を調達しようとしていると考察した。学会報告の成果をもとに学会誌に投稿を行った。 上述の研究成果は、日本における中国メディア研究に対して計量テキスト分析の有効性を示し、分析手法の可能性を広げるという意義を持つ。さらに、言説分析・フレーム分析などとの接合を検討する必要があり、今後の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度から行ってきたデータ収集と分析手法の検討に基づき、2021年に学会で成果を報告することができた。学会報告では、本研究が用いたLSSの手法について参加者とともに議論を行った。これを元に共著にて論文を執筆し学会誌に投稿した。以上のように成果を着実に得ることができている。また、分析結果もおおむね当初計画した通りのものとなっており、研究が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、学会報告の成果に基づきさらに研究を発展させる予定である。計量テキスト分析は妥当性の担保を課題とし、分析手法の精緻化を目指す。また、現在用いている分析手法を元に、他のテキストに応用することを計画している。併せて、文献研究や中国メディアの実態に関する研究を進め、多角的な視点で研究を発展させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
出産により研究期間に変更が生じ、次年度まで研究を延長することとなった。 また、新型コロナウィルスの影響で学会がすべてオンラインになったため旅費が発生しなかった。人件費についても年度内の雇用ができなかったため次年度に繰り越して雇用することとなった。
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