2023年度は主に2つの研究を中心に行った。 第1に、ソーシャル・メディアにおける中国共産党の宣伝戦略を明らかにした。2013年から2023年までの人民日報のWeibo(中国を代表するソーシャル・メディアである「微博」)を対象に、中国共産党の宣伝戦略を量的テキスト分析によって明らかにした。全国人民代表大会といった政治制度に関するテキストと、党に関するテキストでは、異なる宣伝戦略が駆使されていることを実証的に示した。この成果は、2023年6月の日本比較政治学会において「ソーシャル・メディアを通じた中国共産党のイメージ形成―人民日報Weiboを対象に―」というタイトルで報告した。以上の内容を修正し、論文としてまとめ、比較政治学会年報第26号に掲載が決定しした。論文では、党はソーシャル・メディアで反体制派へのシグナルを発信するとともに、経済発展や社会問題を解決するという政権の有能性を強調する。ここから、党はソーシャル・メディアの宣伝を通じて人々の支持を集め、正統性を確保していると結論付けた。 第2に、量的テキスト分析を用いた分析として、2024年3月に書籍を出版した。『中国の新聞管理制度―商業紙はいかに共産党の権力を受け入れたのか―』(勁草書房)において、第5章において、量的テキスト分析を実施した。商業紙である『新京報』と『南方都市報』を対象に、量的テキスト分析によって自己検閲を抽出する試みを行った。 研究期間の全体を通じて、これまで新聞を対象に行っていた分析手法を、ソーシャル・メディアに対する分析へと発展させることができた。これによって、党によるソーシャル・メディアを通じた宣伝の一端を明らかにし、中国の権威主義体制とメディアの関係を実証的に示した。
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