研究課題/領域番号 |
19K13614
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
築山 宏樹 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (60800480)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地方選挙 / 地方議会 / 政治過程 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き、都道府県・市区町村の選挙に関するデータベースの拡充を進めるとともに、そのような選挙データに議会情報や財政状況のデータを組み合わせることで、議会属性が選挙結果に与える影響や、選挙結果が財政政策に与える影響について分析を行った。第一に、2007年から2019年までの市町村議会選挙のデータを用いて、議員報酬が選挙の立候補者の属性に与える影響を分析した。前年度の研究成果では、既に議員報酬の低さが、立候補者数を減少させる結果、無投票当選などの選挙の競争性の低下を招くことが明らかになったが、立候補者の属性に及ぼす影響についても関心がもたれるところであった。その点、本研究の分析結果からは、議員報酬の高さが、特定の属性の候補者の立候補行動を促進する結果として、むしろ議会構成の多様性をある面では失わせることが明らかになった。第二に、1989年から2019年までの市長選挙のデータを用いて、現職者の再選が財政政策に与える影響について分析を行った。国際比較に基づく既存研究では、政権交代が財政構造の変動を生じさせることが知られているが、国の社会・経済・制度的異質性から、政権交代の因果効果が明らかになっているとは言い難い。本研究では、日本の市長選挙のデータに対して、現職者の接戦選挙の回帰非連続デザインを応用することで、現職者の当落が財政構造の変動や財政赤字に与える影響を分析した。本研究の分析結果については、現在、試論的な取りまとめを行っている段階である。上記の研究成果については、最終年度に国際学会等にて研究報告を行い、順次、論文投稿を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究代表者に研究機関の異動が生じた関係から、データセットの準備や研究成果の報告・公表など、研究の進捗状況に全般的な遅れが出た。次年度は、異動先の研究機関で、リサーチアシスタントの協力を得ながら、データセットの完成を目指すとともに、本年度、新たに構築したデータセットについては、分析結果の蓄積が進んでいるため、それらの分析結果の報告・公刊を目指し、進捗状況の正常化に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
異動先の研究機関における指導学生を中心にリサーチアシスタントの協力者を募った上で、地方選挙データベースの完成を目指す。次年度は、複数の国際学会・研究会への参加予定が既に決まっているため、本研究課題の最終的な分析結果の公表を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究機関の異動とともに、感染症に伴う例年と異なる状況下で、リサーチアシスタントの確保・作業指示が十分に行えず、人件費・謝金の支出が滞った。また、国際学会等の渡航に係る旅費の支出は当然に発生しなかった。次年度は、異動先の研究機関の指導学生を中心に、複数のリサーチアシスタントを確保することで、データベースを迅速に完成させたい。
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