本研究は、所得格差に対する認識が経済評価を形成し、それが政治的な支持にいかに影響を与えるのかを分析することを目的に進められた。分析のアプローチとしては、(1)ミクロ・レヴェルの意識調査・実験データを用いるもの、(2)マクロ・レヴェルの世論調査データを用いるものの2種類を計画した。一連の研究を通じて、(1)マクロ・レヴェルでの新たな経済評価指標、党派性指標を構築し、(2)ミクロ・レヴェルの実験研究による補完も進めたことで、日本においては、(3)党派性が経済評価に先行するものの、なおもって政治的な支持に対して経済評価が大きな影響を与えていることが明らかになった。 本年度に関しては、アメリカのマクロ党派性に注目して、経済状態、経済評価、マクロ党派性、大統領支持率といった要素間の因果性を探る論文を執筆し、現在、海外学術誌において査読を受けている段階である。 また、日本における株式市場と消費者心理の関係が、2013年4月以降の量的質的緩和政策(通称、異次元緩和)によりどのように変化したのかを分析する論文を執筆し、現在、海外学術誌において査読を受けている段階である。 関連して、日本における内閣支持率と経済評価の関係について、時事通信社によるデータを用いた研究を整理するレビュー論文を執筆し、所属学部の紀要に掲載した。 最後に、新型コロナウィルスに関連するサーヴェイ実験を実施し、ワクチン接種に関する人々の選好を特定する論文を執筆し、PLOS ONE誌に掲載した。
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