研究課題/領域番号 |
19K13618
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
秦野 貴光 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (20824353)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際連合 / 平和維持活動 / 地域機構 / 地域紛争 / ウクライナ |
研究実績の概要 |
紛争の「政治的解決」に対して平和維持活動(PKO)が積極的な役割を果たすための諸条件を(1)平和維持活動の任務・権限・資源、(2)紛争の原因と性質、そして(3)平和維持部隊が派遣された、あるいは派遣が検討されている紛争地域における政治的アクターの種類ならびにアクター間の相互関係という三つの要因に着目しながら明らかにするため、分析の前提となる概念整理や分析枠組みの構築を行なった。第三の要因に関しては、特に現代国際社会における平和維持活動の実効性に多大な影響を及ぼす政治的アクターとして重要な国際連合や地域機構といった多国間機構ならびに多国間機構間関係に焦点を当てた。 本研究の土台となる分析枠組みを構築した上で、ウクライナ東部におけるドンバス紛争ならびに同地方への平和維持部隊の派遣をめぐる議論に関する分析を、北大西洋条約機構(NATO)、欧州安全保障協力機構(OSCE)、そして集団安全保障条約機構(CSTO)といった地域機構の役割に着目しながら行った。 分析の結果、以下の二点が明らかになった。(1)平和維持活動の任務は多様化してきており、現代世界における紛争の政治的解決に対して平和維持活動が積極的な役割を果たすためには、紛争の原因と性質に応じて平和維持活動の任務と権限を設定し、また紛争処理・解決の段階に応じて平和維持部隊に付与された任務と権限を調整することが重要である。(2)しかしながら、平和維持部隊に与えられる任務や権限の範囲は、紛争に関わっている政治的アクター間の相互関係、とりわけ多国間機構間における政策協調と規範共有の範囲・程度に左右され、場合によっては大きく制約される。 以上の研究成果の一部を単著論文にまとめ、査読付き国際学術誌に投稿・掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、本研究初年度の目標として先行研究の整理と研究で用いる分析枠組みの構築を年度末までに行うことを掲げていたが、研究が順調に進んだ結果、分析枠組みを構築するだけでなく、それを用いた平和維持活動に関する具体的な事例の分析に着手することができた。この点で、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は分析対象の事例を増やし、地域間の比較の視点を取り入れることで、平和維持活動と紛争の「政治的解決」との関係ならびにこの関係性に影響を及ぼす諸要因のさらなる解明に取り組む。 事例として冷戦終焉後世界各地で展開されてきた平和維持活動を取り上げる。これらの事例に関する資料・データを収集し、本研究初年度に構築した分析枠組みを引き続き用いながら比較分析を行う。そして、冷戦終結以降の平和維持活動が紛争の「政治的解決」に対して果たしてきた役割を、国連や地域機構といった多国間機構の役割ならびに多国間機構間関係に着眼して解明する。特に多国間機構間における政策協調と規範共有の範囲・程度が平和維持活動の任務や権限に与えてきた影響を複数の事例を検討するなかで明らかにする。 引き続き国際学術誌に論文の投稿を行い、本研究の成果を広く公表することに努める。昨今の世界情勢を受け、国内外の学会の研究大会の中止・延期が相次いでいるが、オンラインでの研究報告や学術ウェブサイトへの寄稿といった形で本研究の成果を広く発信することに努める。
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