平和維持活動は停戦監視や兵力引き離しに加え、紛争の政治的解決の促進にも貢献すべきであるという認識が国際社会で広まりつつある。こうした背景を踏まえ、本研究では、紛争の政治的解決に対して平和維持活動が積極的な役割を果たすための条件とは何かという問題に取り組んだ。 本研究では、平和維持活動の任務・権限・資源、紛争の性質、そして紛争に関わっている政治的アクターの種類と相互関係に着眼し、特に平和維持活動に携わる国際・地域機構の役割および相互関係に焦点をあてて分析を行った。 平和維持活動に関与する国際・地域機構間の相互関係が、平和維持活動を通じた紛争の政治的解決の実効性に及ぼす影響を分析するため、本研究では事例として、欧州連合とアフリカ連合が協力して実施したアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)及び様々な国際・地域機構が関与した中央アフリカ共和国における一連の平和維持活動を取り上げ、さらには欧州安全保障協力機構、北大西洋条約機構、そして集団安全保障条約機構といった複数の地域機構の存在にもかかわらず、平和維持部隊の派遣とその活動を通じた紛争の政治的解決が実現しなかったウクライナ東部におけるドンバス紛争を取り上げた。 分析の結果、複数の国際・地域機構が関与する平和維持活動が紛争の政治的解決に貢献するための条件として以下の二つが浮かび上がった。第一に、平和維持活動に関与する国際・地域機構間に戦略的パートナシップのような協力関係あるいは政策協調が存在していることである。第二に、平和維持活動を通じて目指すべき紛争の政治的解決の方向性及び紛争後に構築される政治秩序のあり方に関して国際・地域機構間にある程度の共通認識が存在していることである。本研究によって、平和維持活動が紛争の政治的解決に一定の貢献を果たすためには、これらの条件が満たされることが重要であることが明らかになった。
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