本研究は、国際危機や政府が対外的な軍事行動を起こした場合に、政府に対する有権者の支持率が短期的に上昇する「旗の下の集結効果(Rally ‘Round the Flag Effect)」という現象を実証分析することを目的している。 最終年度は、上記の目的を達成するために、報告者が保有する既存のデータ及び昨年度までに収集したデータを用いて複数の分析を実施し、研究論文の作成に努めた。第1に、報告者が保有する既存データに、データ収集期間中に偶発的に北朝鮮がミサイル発射実験を実施したものがあり、ミサイル発射実験前後の回答者グループで政府への支持(集結効果)がどのように変化したのかを明らかにした。第2の分析では、戦争や軍事行動などに対する支持・不支持を規定する要因として男女差に注目し、子の有無、子の性別、そして第1子の性別が男女差及び男性内・女性内の差を生じさせていることを明らかにした。第3に、安全保障上の政策や約束を実行しなかった場合に発生する観衆費用の大きさが、不実行の理由及び有権者のジェンダー的特徴を生み出す要因(性別、婚姻状態、子の有無)によって違いがあることをサーベイ実験を用いて明らかにした。第4に、国連PKOに参加する自衛隊の任務拡大に対する態度が、任務拡大の目的(例:戦略目的や人道目的)よって変化するかを分析した研究では、欧米を対象とした既存研究とは違い、日本のデータでは人道的目的を達成するために国連PKOへ積極的に参加を行う場合であっても男女差は大きく、女性よりも男性の方が任務拡大に肯定的であることが明らかになった。これらの分析結果をまとめた論文はおおむね完了しており、随時学術誌への投稿を行う。
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