研究課題/領域番号 |
19K13629
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐々木 葉月 金沢大学, GS教育系, 講師 (00778938)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 途上国のセキュリティ・ガヴァナンス / 中央政府の正当性 / ネパール紛争 |
研究実績の概要 |
本年度は、セキュリティ・ガヴァナンス概念の精緻化と、調査対象のネパールでの第一次調査と文献・資料収集、及びそれらの分析・検討を行った。 まずセキュリティ・ガヴァナンス概念を用いるにあたり、安全保障における官民アクターの連携が機能する条件をスリランカの事例を理論的に整理して明らかにした。官民連携はなされたが、民兵による人権侵害が起こったスリランカ紛争の事例を、メタ・ガヴァナンス概念を用いて分析し、正当性を有する協働には単なる利益の共有だけでなく、三つの異なるレベルの要因が重要であることを明らかにした。研究成果は令和元年に国際学会で発表した。上記論文は海外での書籍刊行に向け、現在査読中である。 また、令和元年に実施したカトマンズを中心とした第一次調査では、現地の研究協力者との協働やネットワーキングがスムーズに進み、元々二年目に予定していた元反政府勢力関係者へのインタビューや、当初予定していなかった、当時の政党勢力の動きに通暁するメディア関係者へのインタビューを実施することができた。これらのインタビューの一部は、当初の計画にあった文献資料による分析を補強する貴重な資料であり、研究の質の向上に寄与すると思われる。特に、インタビューを行った反政府勢力関係者は当時の指導部の一員であり、その内容から、反政府勢力側が中央政府の正当性の低下を戦略的に活用していたことがうかがえるなど、仮説を支持する成果が得られた。資料面においても、現地の研究者の紹介を受け、ネパール紛争に関する研究書を現地で多数入手することができた。現在、インタビュー内容と資料を分析し、論文の執筆に移っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セキュリティ・ガヴァナンス概念の精緻化に貢献する研究成果を国際学会で発表し、出版に向けて査読中である。ネパール現地調査では、当初の計画で二年目に実施を予定していた当時の反政府勢力関係者へのインタビューが前倒しで実施できたほか、同じく二年目に予定している政党勢力へのインタビューの前段階となる、メディア関係者へのインタビューも実施することができた。資料収集・分析や執筆状況も順調であり、現地の研究協力者や研究者も次回調査時の協力を約している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は研究が順調に推移したが、令和二年度はコロナ禍や執筆者の大学の異動といった、当初の計画で予想していない状況が発生している。現在は一年目の資料をもとに執筆を進めているが、特に前者の事情により、当初予定していた令和二年度の海外現地調査の実施が可能か不透明な状況である。年度後半に研究の進捗への影響が出てくることも考えられるため、現地研究者とも連絡をとりながら、対応策を講じたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では令和元年度内に第二次調査を予定していたが、第一次調査で多くのインタビューや文献資料が得られたため、それらの整理と確定部分の執筆を優先した。コロナ禍の状況によるが、可能であれば、令和二年度内に分析を深めるための追加のネパール現地調査の実施を検討している。
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