国内及び調査対象であるネパールの新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、制限が緩和されたため、事業期間2回目の現地調査が可能と判断し、2022年9月にネパールのカトマンズに渡航し、ネパール内戦期をよく知る研究者や政党政治家などへのインタビュー調査を行った。トリブバン大学の国際関係の研究者との研究テーマに関する意見交換や調査への協力を得たほか、2021年度にオンライン・インタビューを行った内戦時の国軍士官に対面でインタビューを行い、詳しい内戦時の戦況や軍事援助の実態についての証言を得た。加えて、現地でのネットワーキングから、内戦後期にマオイストとの和平交渉を行った当事者であるネパール国会議員へのインタビューが実現し、内戦終結における外国の役割について、交渉当事者の認識も含め、貴重な証言を得ることができた。調査の成果は、執筆中のネパールを事例としたセキュリティ・ガヴァナンスの論文に盛り込んでおり、追加の調査結果を加えて、学術誌へ投稿する予定である。 また、テロや紛争における非国家主体の多様な役割を明らかにするため、テロ対策への市民社会の関与が進む欧州を事例に「EUにおけるテロ予防のローカル・ガバナンスの可能性と課題」を2023年3月に出版された学術書『外交・安全保障から読む欧州統合』の所収論文として刊行した。EUの安全保障分野における協調的なガヴァナンスの利点と問題点の検討から、途上国のセキュリティ・ガヴァナンスの特徴を再確認し、執筆中の論文に知見を反映した。
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