研究課題/領域番号 |
19K13632
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
舛方 周一郎 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (40734538)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気候変動対策 / 多国間交渉 / 持続可能な開発 / 戦略的パートナーシップ / ラテンアメリカ / 再生可能エネルギー / 中国 / 南南協力 |
研究実績の概要 |
研究計画3年目の令和3年度は、以下の文献整理と論文執筆を通じて研究の成果を示すことができた。 (1)前年度に引き続き、気候変動対策における南南協力に関する文献を渉猟し、気候変動条約締約国会議(COP)や持続可能な開発(SDGs)をめぐる中国・ブラジル間の相互協力に関する研究を整理した。その結果、両国間での経済的相互依存に加えて、新興大国としてSDGsに貢献するという規範的役割が二カ国の戦略的パートナーシップの深化に寄与していることを確認できた。この知見は、中国社会科学院が主催する国際シンポジウムでの口頭発表(招待)や、日本国際政治学会誌『国際政治』でも公表した。 (2)前年度の調査からブラジルは他のラ米諸国と比べて新興大国として特異な役割を担っていることが明らかとなった。そのため、比較対象国として当初予定していたメキシコから、より類似点の多いインドに変更して調査を継続した。ブラジル・インド関係を中心に比較検討を行った結果、ブラジル・インド関係の進展速度はブラジル・中国関係より遅いものの、自由と民主主義の理念を共有することから着実な進展が見込めることが明らかになった。その成果は、米国で開催された世界国際学会(ISA)に参加して報告した。 (3)本研究課題とも密接に関わる環境政治学とブラジル気候変動政策に関する研究課題を、「つながりと選択の環境政治学-『グローバル・ガバナンス』の時代におけるブラジル気候変動政策」として出版した。なお本書の出版には、科研費研究成果公開促進費(学術図書)の出版助成と本研究の成果の一部を活用した。
以上3点に加えて、国内外のシンポジウムや米国ラテンアメリカ学会(LASA-ASIA)などの国際学会で日本とブラジルの気候変動協力についても報告する機会を得た。この点は本研究とも直結する研究実績の一つである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況はおおむね順調に進展している。計画当初は7月~8月の夏期休暇期間と2月~3月の春期休暇期間においてブラジル関係者への聞き取りや公文書の収集といった本調査を実施する予定であった。しかし長引く新型コロナウイルスの感染拡大により、渡航断念を余儀なくされた。その代わりに日本国内でできる文献調査と論文の執筆に集中してきた。特に論文の質を確実に向上させたただけなく、申請者の研究に関心をもった海外研究者との人脈形成につながったという意味においても、世界国際学会(ISA)に対面で参加したことは、実りあるものであった。なお本会で報告した研究の成果はブラジル外交研究を代表とする国際学術誌に投稿して、現在のところ査読審査中である。
さらに気候変動・エネルギー対策への世界的な関心の高まりにより、日本国外でも戦略的パートナーシップを介したアメリカ-ブラジル・中国-ブラジル・日本-ブラジルの関係にますます注目が集まった。そのため、本研究に付随するテーマにおいて、学会報告や論稿・書籍(分担執筆)を公表する機会を得た。加えてブラジリア大学のCristina Yumie Inoue准教授との国際共同研究の実施や、既に原稿(分担執筆)を提出して年内中に出版する予定の英語書籍も2冊ある。
以上のように本年度は、海外調査こそできなかったものの、学会報告7件(国際学会含む)、論稿2本(査読あり)、担当執筆の書籍3冊(うち1冊はスペイン語)、単著1冊という成果となった。この事実は本研究の進捗に進展があったことを示す証左といえる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、本研究計画は研究期間の延長申請を行った。感染の状況が世界的に落ち着き始めており、調査対象国の受け入れ体制も改善していることから、本年度はようやくブラジルを中心にラテンアメリカ諸国での現地調査を実施する予定である。さらにロシアのウクライナ侵攻で、ロシアのエネルギーの相互依存関係が顕在化し、新興大国間の気候変動・エネルギー対策への世界的な関心が高まっている。 したがって本研究計画の4年目にあたる令和4年度は、研究成果の発表と研究調査を中心に行う。第一に、米国で開催された世界国際学会(ISA)に参加して報告した論文を修正してブラジル外交研究を代表的する国際学術誌に投稿する。第二に、研究の進捗状況に応じて、戦略的パートナーシップを介したメキシコの気候変動政策(とりわけ再生可能エネルギー政策)への中国の関与だけでなく、ブラジルのエネルギー・気候変動政策におけるロシアおよび南アフリカと関与についても、随時、国際シンポジウムなどを通じて口頭発表する。特に、10月のGlobal Governance System(査読あり)と3月の世界国際学会(ISA)で口頭発表しその後、発表時にうけたコメントを生かしてそれぞれの論文を改訂して、研究雑誌に投稿する。第三に、ここ数年で申請者が実施してきたアジア・ラテンアメリカ間の気候変動・エネルギー協力をめぐる研究の中で得た知見と人脈を活かして、今後は新興大国を対象とする研究者同士での国際共同研究につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の計画で想定していた夏期・春期の在外調査を断念したため、本年度分の差引額は翌年度分に繰り越されることになった。ただし次年度は、研究対象地の社会情勢や保健体制も改善しており、本研究が計画していた在外調査の可能性は高まっている。そのため期間延長申請を行い、残りの使用額は渡航費・宿泊費・日当として繰り越しするのがよいと判断した。
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