研究計画4年目の令和4年度は、以下の文献整理と論文執筆を通じて研究の成果を示すことができた。 (1)気候変動対策における南南協力に関する文献を渉猟し、気候変動条約締約国会議(COP)や持続可能な開発(SDGs)をめぐる中国・ブラジル間の相互協力に関する研究を整理した。結果、両国間での経済的相互依存とSDGsに貢献するという規範的役割に加えて地経学的計算が二カ国の戦略的パートナーシップの深化に寄与していることを確認できた。この知見は日本ラテンアメリカ学会や世界国際学会(ISA)のパネルでも報告した。 (2)前年度の調査からブラジルは他のラ米諸国と比べて新興大国として特異な役割を担っていることが明らかとなった。そのため比較対象国として当初予定していたメキシコから、より類似点の多いインド・南アフリカ・ロシアなどのBRICS諸国に変更して調査を継続した。特にブラジル・インド関係を中心に比較検討を行った結果、ブラジル・インド関係の進展速度はブラジル・中国関係より遅いものの、自由と民主主義の理念を共有することから着実な進展が見込めることが明らかになった。この結果を成果とするために国際ジャーナルに投稿中である。 (3)本研究課題とも密接に関わる日本とブラジルの環境協力に関する研究課題をRoutledgeから出版の学術英語書籍の章の中で公表した。なお本書の出版には日本学術振興会二か国間事業(ブラジル)と本研究の成果の一部を活用した。
以上3点に加えて国内外のシンポジウムやThe 5th South Africa-Japan University Forum (SAJU) などのセミナーでブラジルと新興大国の気候変動協力について報告する機会を得た。またラテンアメリカ政治の共著や世界のコロナ対応に関する編著の1章を刊行したことは本研究とも直結する研究実績である。
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