研究課題/領域番号 |
19K13636
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
阿部 亮子 政策研究大学院大学, 政策研究センター, 客員研究員 (00823931)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ / 安全保障 / 戦略 / イラク戦争 |
研究実績の概要 |
本年度は新型コロナ感染症の感染蔓延が収束していないため、当初予定していた米国での資料収集が困難になった。そのため、本年度は、前年度の研究において明らかになった以下の三つの課題に取り組んだ。本研究の目的は、21世紀初頭の米国海兵隊の実戦に着目することで、国防組織における構想の変容が、いかにケースに反映されるのかを考察することである。 課題の一つ目は、海兵隊の歴史とそして現在の海兵隊の任務改革の文脈の中に、いかに21世紀初頭の海兵隊の任務と戦略・作戦構想を位置づけるのかということである。海兵隊史と、陸戦から海洋戦略の支援、戦争から抑止へと変化しつつある、現在の海兵隊の任務の改革を整理し、その結果を「アメリカ海兵隊の任務の変容―独立戦争から戦略的競争まで―」フルブライト公開セミナーにて報告した。二つ目は2010年代後半に発表されたイラク戦争に関する研究に関する読解である。三つ目は、ベトナム戦争後の「戦略」概念の見直しの整理である。その成果を書評という形で発表した。戦略概念の整理は、本研究をさらに発展させるために必要不可欠な作業である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新型コロナ感染症の感染が収束していないため、米国での聞き取り調査と資料収集ができなかった。ただし、米国海兵隊から数年以内に発行された文書、実務者たちの執筆した論文、シンクタンクが発行するペーパーを収集・読解し、米国海兵隊の任務と戦略・作戦構想について、以下の3点を解明した。①陸戦から海洋戦略の支援へ②戦争から抑止を取り入れつつあること③新しい任務と従来の戦略・作戦構想である機動戦概念の整合性について議論されていることである。加えて、イラク戦争の起源に関する現在の研究動向についても、レジームチェンジの思想的基盤を、従来のネオコンサバティブに着目する研究から、より広くリアリズムとリベラリズムの思想的潮流に位置づけるようになっていることを整理した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、本年度の研究を継続し、以下の3つの研究に取り組む。①海兵隊の任務の変遷と戦略・作戦構想の整合性を巡る議論を整理し、報告する②イラク戦争に関する近年の解釈を戦略の観点からまとめ、研究ノートを執筆する。イラク戦争の見直しについて、国際セミナーを企画中である。③戦略・作戦という分析枠組みをより精密化するために、戦略・作戦概念に関する研究会を実施する。第一回目、第二回目については、すでに発表者に依頼し、承諾をもらっている。研究代表者もベトナム戦争後の戦略概念の見直しについて報告する予定である。イラク戦争に関する近年の先行研究の見直し、そして、戦略・作戦概念の変遷や定義を整理することで、昨年度の研究において生じた課題である、「果たしてイラク戦争はどのレベルの失敗だったのか」という問いの考察へと、本研究を発展させ、次年度継続科研申請の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の感染が収束しなかったため、予定していた米国での資料収集と聞き取り調査を実施できなかった。そのため、次年度使用額が生じた。本年度は、研究会と国際セミナーの実施を予定しているため、そのための謝礼や交通費、図書や物品の購入、研究ノート(英語)の遂行代、新型コロナ感染症の感染が収束した場合には、米国での学会や研究会への参加とフィールドワークでの旅費を予定している。
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備考 |
「書評:北川敬三『軍事組織の知的イノベーション』勁草書房、『国際安全保障』第49巻第2号、2021年。「アメリカ海兵隊の任務の変容 — 独立戦争から戦略的競争まで—」、フルブライト公開セミナー、オンライン、2022年
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