研究課題/領域番号 |
19K13637
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西 直美 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (50822889)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タイ深南部 / ナショナリズム / サラフィー主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究活動スタート支援(2018年度)の課題を引き継ぎ、脱過激化をめぐる政治に対する考察を深化させることを目的として、国内外での学会発表を実施した。本年度の発表は、2018年度にタイで実施した現地調査をもとに、分離独立主義に対する支持が強いとされる地域における、サラフィー主義(改革派)の影響について検討を行ったものを中心としている。 タイにおいて、過激化、脱過激化をめぐる問題は、何重にも政治化されている。一般的に政府にとって過激である分離独立主義、すなわちマレー・ナショナリズムの影響が強い地域では、マレーの伝統やシャーフィーイー学派に依拠する伝統派の影響が強く、イスラームの原典への回帰を志向するサラフィー主義の影響は限定的であるとされる。諸外国では過激主義の代名詞ともされるサラフィー主義であるが、タイの文脈では政府と敵対関係にはない。こうした政府との距離感が、伝統派がサラフィー主義に対して不信感を抱く一因にもなっている。しかし、伝統派が強いとされる地域においても、サラフィー主義の影響はみられる。背景には、泥沼化する紛争の下で、サラフィー主義が人々に対して政治から距離を取ることを可能とする基盤を与えているという側面がある。 発表内容に対しては、タイにおけるサラフィー主義研究を牽引する研究者をはじめとして、国内外の研究者からコメントを得ることができた。成果は「イスラーム的価値観をめぐる相違と「過激化」問題:タイ深南部におけるサラフィー主義の受容に着目して」(『一神教世界』11号)としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マレーシアに関する成果の発表は不十分であったとはいえ、当初の研究目的・研究実施計画に従って研究を遂行し、研究成果を公にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響により、海外における現地調査が困難になることが予測される。当初の研究実施計画に従って研究を進めるものの、文献調査への切り替えのみならず、オンラインでの調査の実施に向けて調整を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,現地調査において当初予定していた宿泊費が発生しなかったこと、現地アシスタントに対する謝金を計上していたがインタビュー調査を含めて研究代表者自身で行ったことによる。 今後の使用計画としては、秋以降、新型コロナをめぐる状況が改善されていれば、現地調査を実施する予定である。同時に、オンラインでのインタビュー調査の調整を行う。
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