研究実績の概要 |
2020年度にはコロナ・パンデミックのために海外での現地調査を実施することが出来ず、資料調査と執筆を中心に研究活動を実施した。本研究の主たるテーマである習近平政権の世論誘導について、笹川平和財団SPF China Observerに発表した「新型コロナウイルスをめぐる中国の対外宣伝―人類運命共同体を促進する統一戦線工作」において、パンデミックが発生したことを受けて、従来から進んでいた「統一戦線工作」強化の方針が、国内外において加速したことを指摘した。 また2019年度にタイで実施した日中第三国市場協力に関する現地調査を論文にまとめ、“Emerging Challenges of Japan’s Cooperative Approach to China”(East Asian Policy, Vol. 12, No. 04)を発表した。さらにこの事例を踏まえて、日中の戦略的ナラティブが競合するなかでどのように日中経済協力が実施されたのかを考察し、オンラインで実施されたSouthern Political Science Association(SPSA) 2021 Annual Meetingにおいて“Japan-China Strategic Communications Dynamics under the Belt and Road Initiative: The case of ‘Business Cooperation in Third Countries”を報告した。 米中対立が厳しさを増す中で習近平政権は「人類共通の価値観」を打ち出し、「中国式の民主」を主張する姿勢に転じた。こうした政策変化について「『人類共通の価値観』とはー洗練された戦略的ナラティブの模索」(『東亜』5月号)を執筆した。
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