研究課題/領域番号 |
19K13645
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
高橋 悠太 一橋大学, 経済研究所, 講師 (10835747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マクロモデル |
研究実績の概要 |
NYU AbuDhabiのNorris准教授の協力を得て,クロスセクションのデータをマクロモデルでどう扱っていくのか,という問題に関して精力的に研究を進めた.既存マクロモデルでは,クロスセクションのデータを扱った実証分析を行う時と,それに基づいてモデル分析を行う時に異なるモデルを書く,というアプローチが取られている.(例えばNakamura and Steinsson(2017)AER).本研究では,このような理論上の食い違いのないマクロモデルを構築することに成功した.つまり実証分析とモデル分析を同じフレームワークで行える,という点で,既存の論文に比べ優れている.このフレームワークでは様々な経済主体がお互いに貿易を通じ関連しあうモデルとなっており,現実に近いものである.さらにこの異なる経済主体が金融資産を自在にやりとり出来る,という金融完備市場仮定を用いることで,モデルを解析的,数値的に扱うことが簡単になる.この点は実証分析を行う点においても有用な性質である. さらにこのフレームワークが実証的に正しいかどうか,という点をアメリカの州の貿易データを用いてテストした.このモデルは金融市場が完備である,という強い仮定に基づいているため,現実のデータに強い予想を持つ.この予想を現実のデータで成り立つかどうかを調べた.残念ながら実証分析の結果は曖昧であった.つまり,金融市場の完備性は備わっている,とも備わっていない,とも言えないという結果しか得られなかった.もし肯定的な結果が得られていれば,既存のモデルを大きく改善することができた,という点からは残念な結果である.この結果を受けて2021年度は,どのように改善・改訂していけるのか,という点の議論を続けていくことでNorris准教授とは同意した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむねスムーズに進んだ.モデルの構築,それをテストするための実証分析のためのデータ集めも速やかに行われ,全てが予定通りに進んだ.しかしながら,実証結果が肯定的なものではなかったため,以後どうやって進めていくか,ということについてはまだ決着がついていない.
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今後の研究の推進方策 |
上記のように,実証分析の結果は我々が望むものではなかった.これを受けて複数のアプローチを考えており,2021年度はそのどれかを実行してはどうかと研究協力者のNorris准教授と考えている.一つは,本研究のある種否定的な結果は,我々の実証分析だけではなく,既存のモデルにも当てはまるものである.そのためこの結果をそのまま論文としてまとめ,発表する,という考え方である.二つ目の点は,視点を少し変え,本研究のアプローチが当てはまるような実証分析を行えないか,という点である.この二点目については目下Norris准教授と話し合いを続けている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により,多くの学会,海外出張がキャンセルになり,使用額と使用計画に違いが生じた.2021年度使用額については,令和2年度助成金と合わせて,リサーチアシスタントを積極的に雇っていく予定である.
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