研究課題/領域番号 |
19K13646
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大木 一慶 金沢大学, 経済学経営学系, 講師 (90803445)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経済成長理論 / 内政成長モデル / R&D(イノベーション) / 企業の異質性 / 破壊的イノベーション / 持続的イノベーション / 研究補助政策 / 特許保護政策 |
研究実績の概要 |
本研究は『イノベーション活動の主要な担い手は大企業、中小企業のどちらだろうか?』という命題に対して、『破壊的(Disruptive)イノベーションは中小企業が、持続的(Incremental)イノベーションは大企業が大きな担い手となる』という経営学者が提唱する実証研究に着目し、両イノベーションがどのような形で経済成長に寄与するのかを、経済学的フレームワークで分析することを目的としている。 本研究が目指す最終目標は、既存企業による破壊的イノベーションと持続的イノベーション、新規企業によるイノベーションを同時にモデルに組み込んで、各イノベーションへの補助や新規企業への補助、特許期間の延長が経済成長にどのような影響を与えるのかを分析することであるが、いきなりすべてを同時に分析することは困難が大きく、既存研究からの乖離も大きい。 そこで今回の研究課題では、まずは『異質性のある既存企業による破壊的イノベーションと新規企業によるイノベーションを考慮したモデル』と『異質性のある既存企業による持続的イノベーションと新規企業によるイノベーションを考慮したモデル』を個別に構築して分析を行うことで、最終目標へ向かう土台を固める方針とした。 2019年度は、『異質性のある既存企業による破壊的イノベーションと新規企業によるイノベーションを考慮したモデル分析』を"Disruptive Innovation by Heterogeneous Incumbents and Economic Growth: When do incumbents switch to new technology?"として執筆し、DPとして刊行できたことにより、予定通りに目標の半分を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は異質性のある既存企業による破壊的イノベーションと新規企業によるイノベーションを考慮したモデルを構築して分析を行った。本研究は"Disruptive Innovation by Heterogeneous Incumbents and Economic Growth: When do incumbents switch to new technology?"として論文にまとめ、DPとして刊行した。 本研究では、『規模が小さい企業ほど、破壊的イノベーションに積極的で、規模が大きい企業ほど破壊的イノベーションに消極的になる』という経営学者が提唱する実証研究に整合的な結果を得ることができた。 さらにそのような状況下で、破壊的イノベーションへの補助・新規企業への補助・特許期間の延長が経済成長に与える影響を、経済学的フレームワークを用いて解析的アプローチと数値的アプローチの両方を用いて分析した。 その結果、『新規企業への研究補助が既存企業の研究意欲を減退させる可能性がある』、『既存企業への研究補助が場合によっては経済成長率を低下させる可能性がある』、『人口規模が大きいほど既存企業の破壊的イノベーションが少なるなる可能性がある』といった具合に、同質企業のみを考慮した伝統的な内政成長モデルでは見られないような結果をモデル上で理論的に導出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は『異質性のある既存企業による持続的イノベーションと新規企業によるイノベーションを考慮したモデル』を構築して分析を行う予定である。 上述したように本研究が目指す最終目標は、既存企業による破壊的イノベーションと持続的イノベーション、新規企業によるイノベーションを同時にモデルに組み込んで、各イノベーションへの補助や新規企業への補助、特許期間の延長が経済成長にどのような影響を与えるのかを分析することである。 2019年度の研究成果で『異質性のある既存企業による破壊的イノベーションと新規企業によるイノベーションを考慮したモデル』の分析には一区切りがついたので、目標の残り半分を引き続き研究していく予定である。 また2019年度に執筆した"Disruptive Innovation by Heterogeneous Incumbents and Economic Growth: When do incumbents switch to new technology?"を海外査読論文に掲載できるよう、査読プロセスも同時並行で進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおよそ予定通りであったが、若干使用額が予定を下回った。 本年度は2本目の論文を完成させる予定であるため、昨年度よりも英文校正費や論文投稿料が必要になることが予想されるので、今年度の余剰分を充てる予定である。
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