研究課題/領域番号 |
19K13652
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
森田 裕史 法政大学, 比較経済研究所, 准教授 (70732759)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財政政策 / ゼロ金利政策 / VAR / 経済予測 / MIDAS |
研究実績の概要 |
時系列データを用いた財政政策の効果に関する分析について以下の成果が得られた。 (1)時変係数VARモデルにトービットモデルを組み込んだ推計モデルを構築し、ゼロ金利政策の採用が財政乗数に与える影響を明らかにした。分析の結果、従来存在する理論モデルが予測する通りに、政府支出の増加(財政政策ショック)が物価を刺激し、ゼロ金利下で実質金利の低下を引き起こす経路を通じて財政乗数を高めることが確認できた。この結果は、ゼロ金利期間の定義や政府支出の定義を変更しても頑健であった。本分析は、推計期間をゼロ金利期間とそうでない期間に分けて同様の効果を検証してきた先行研究とは異なる手法を新たに提案したこと、さらに、新しい推計モデルによって定量的な結果を得たことは非常な意義を持っている。 (2)建設業の株式リターンを利用して公共投資の予測可能性を検証した。日次で得られる建設業の株価の情報を用いて、月次データである公共投資の将来の動きがどの程度予測できるかを、Mixed Data Sampling (MIDAS)回帰モデルと呼ばれる周期の異なるデータをひとつの推計式で取り扱う回帰モデルを用いて明らかにした。この分析の目的は、公共投資の予測を通じて、財政ニュースショックの系列を作成し、その効果を明らかにすることである。分析により、建設業の株式リターンが将来の公共投資の変動に関する情報を有していること、また、日次のデータを月次のデータに集計することなくそのまま利用することで予測の精度が高まることが示された。さらに、推計で得られた財政ニュースショックは、民間消費や実質賃金を刺激する効果を持つことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時系列データを利用した財政政策の効果の分析について、ゼロ金利下の政策効果の変化の分析に加えて、財政ニュースショックに関する研究成果まで得ることができた点は当初の計画以上に進展できたと言える。ただし、金融政策に関しては十分に分析を進めることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
非伝統的金融政策の効果に関する分析を進めることに加えて、公共投資の予測可能性についてより精度の高い予測が行えるモデルの構築を目指す。また、それと同時に2019年度の研究成果はすでに論文にまとめているため、国際的査読付き学術誌への掲載を目指し投稿を行う。さらに、可能な限り国際学会での報告を通じて、研究成果の発信を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定であった学会がいくつか中止・順延となり旅費が不要になったため。2020年度には当初予定していた論文の英文校閲料や雑誌への投稿料に加えて、新型コロナウイルスの影響によるリモートワークへの対応として必要となる機材等の整備に資金を利用する。
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