研究課題/領域番号 |
19K13652
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
森田 裕史 法政大学, 経済学部, 准教授 (70732759)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財政政策 / 時系列分析 / 高齢化 / 情報効果 |
研究実績の概要 |
2021年度は、(1)時変係数VARモデルを用いたゼロ金利下における財政乗数の変化に関する実証分析、(2)財政乗数の大きさの高齢化の進行度合いに対する依存性の検証、(3)財政アナウンスメントに含まれる情報効果の検証、の3点についての研究を主に行い、それぞれについて以下のような成果が得られた。 (1) 「ゼロ金利下の財政乗数の変化」に関する分析は、昨年度の段階で国際研究雑誌に投稿を行っていたが、当該雑誌より改定要求を受け取ったため、再投稿に向けて論文の改定作業を進めている。 (2) 「財政乗数の高齢化に対する状態依存」の研究では、階層パネルデータの手法を都道府県データに適用し、少ないサンプルサイズの下でも、高齢化率が高い都道府県グループと低い都道府県グループ間で、財政乗数に統計的に有意な差を発見した。さらに、実証分析の結果を再現できる理論モデルを構築して、高齢化の進行度合いによって財政乗数が変化する原因が高齢者の労働市場へのアクセスの欠如にある可能性を見つけ出した。本研究は、2021年3月に論文が国際学術雑誌に掲載された。 (3) 「財政情報効果」の分析では、景気対策としての財政政策に関するアナウンスメントが今後の政府支出の増加以外に、現在・将来の経済状況に関する情報を含んでいるかどうかを明らかにすることを目的として、アナウンスメントのタイミングとその前後における株価の変化を整理したデータセットを作成した。そして、経済の不確実性が高まっている時には、拡張的財政政策に関するアナウンスメントが株価を低下させることを発見した。この研究で得られた発見についても既に国内外の学会で報告を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼロ金利下の財政乗数の分析に関する論文は、研究雑誌への掲載に向けて改定・再投稿の段階まで進んでおり、高齢化に対する状態依存性の研究は「Economic Modelling」への掲載が決まった。さらに、情報効果の分析についても、国内の著名な研究会議である「第23回マクロコンファレンス」に採択・報告を行うなど、国内外の学会で順調に報告を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
財政情報効果の分析は、2022年度も国内外の学会で研究報告を行い、研究の重要性を広く発信するとともに、学術雑誌への投稿・掲載を目指す。また、財政政策の効果だけではなく、金融政策について金利と株価の高頻度データと金融政策決定会合のタイミングを組み合わせて、情報効果の分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、遅くとも2021年度の後半には対面での学会開催が行われるものと見込んでいたが、新型コロナウイルスの影響が長引き、それらが全てオンライン開催となり、旅費の使用分が予想外に少なくなったため。2022年度には既に対面で行われることが決まっている学会での報告があるため、それらに積極的に参加することで研究費を利用する。また、大学院生をリサーチアシスタントとして雇用する予定である。
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