2022年度は、(1)ゼロ金利下における財政乗数の測定に関する分析に加えて、(2)財政アナウンスメントに含まれる情報効果の分析、及び、(3)これまでの研究活動で得られた時系列分析手法を様々なマクロ経済現象に応用する分析に取り組んだ。(1)については、2021年度に国際査読付き学術雑誌に投稿し、その改訂作業を行ってきたが、まだ受理には至っていない。(2)の財政情報効果の分析に関しては、2022年9月に“Signaling Effects of Fiscal Announcements”としてFederal Reserve Bank of Chicagoからワーキングペーパーを刊行した。さらに、2022年11月に米国ダラスで行われたNBER Conferenceをはじめ、国内外の著名な学会・研究集会で研究報告を行ってきた。(3)に関しては、『マクロ経済構造の分析‐時系列分析手法とその応用‐』(日本評論社)を2023年3月に刊行し、その中で本研究課題の中心的な分析手法であったベクトル自己回帰モデルの手法を、財政政策だけでなく、金融政策や景気循環、不確実性の分析に幅広く応用し、共著論文を含めて4本の論文を執筆した。 研究期間全体を通じては、主たる研究対象であるゼロ金利下の財政乗数に関する分析が査読付き雑誌に受理されることこそならなかったもののワーキングペーパーとして研究成果は公表されており、さらに関連する研究において論文や書籍の執筆が進み、また、数多くの国際コンファレンスで報告する機会を得ることができ、十分な研究成果が出たものと考えている。
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