研究期間の中で、不確実な情報が存在しうる現実的なマッチングやネットワークの形成に関するいくつかの研究成果が得られた。以下ではその主要な結果を示す。 1つ目は、結婚支援サービスの効果に関する理論分析である。結婚市場の想定には、マッチに関する摩擦(限られた候補とランダムに出会う)を考慮できるサーチモデルを用いて、すべての主体が自由にアクセスできる一般的な市場の中に追加費用を支払った主体のみが参加できる限定的な市場が存在するような状況を考えた。結果として、各個人の戦略はサービスを利用するかしないかに関わらず結婚相手として受け入れる水準を上げ、これによって事業を利用する個人すらも効用水準、生涯未婚率、期待継続時間を下げる可能性があることなどが示された。 2つ目は、救急隊の最適配置に関する研究である。現実において救急事案が発生したとき、その地点に最も近い救急拠点(消防署)に配置された救急隊が別の事案に出ているために、より遠くに位置する拠点から救急隊を派遣させるケースが少なくない。この研究では、まずそのようなケースを考慮した救急のモデルを新たに開発した。このモデルを用いて、与えられた事案データの中で現場到着時間の上限を最小化するような救急隊配置を求める最適化手法と現場到着時間の平均を最小化するような配置を求める最適化手法を考案し、コンピューターを用いた実験によって両者の性能比較を行った。検証を通して、平均時間を最小化する手法においては、全体効率的な配置が提案されるものの、事案間での差が比較的大きくなりがちであること、またその一方で、最大時間を最小化する手法においては、全体効率性という面では劣るが、現着時間がより均等である配置を提案する傾向があることが分かった。
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