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2019 年度 実施状況報告書

内生的な企業の異質性を考慮した特許政策および貿易政策の理論的分析

研究課題

研究課題/領域番号 19K13660
研究機関関西大学

研究代表者

岸 慶一  関西大学, 経済学部, 助教 (80803668)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードイノベーション / 技術伝播 / 模倣 / 特許 / 貿易 / 生産性分布 / パレート分布 / 経済成長
研究実績の概要

2019年度は特許政策と貿易政策の2つの研究を実施した。

(1)特許庁は、より優れた発明に特許権を付与する。その審査基準(最低合格ライン)を厳しく定めれば、平均特許品質(平均合格点)を向上できると常識的に考えられている。一方で、本研究では、その最低合格ラインを引き上げれば、平均特許品質が下がる可能性があることを示した。最低合格ラインを引き上げれば、もちろん、平均特許品質を上昇させる効果を持つ。しかし、それと同時に、特許取得難易度が高まるために、企業の特許出願数が下落する。特許出願された発明は、その技術内容が公開されるため、出願数の下落は知識の漏えいの減少を招く。その結果、後続の大きなイノベーションが発生しにくくなる。この効果が強く働くと、最低合格ラインの引き上げによって平均特許品質が下落する。

(2)企業のイノベーションと技術伝播(模倣)を考慮した理論モデルの下で、貿易の自由化(貿易コストの下落)が産業の平均生産性に与える影響を明らかにした。貿易の自由化は輸出から得られる利潤を上昇させ、その結果としてイノベーションの価値を増加させる。なぜなら企業はイノベーションによって、より高生産性(高品質・低価格)な製品を生産でき、その製品を輸出することで大きな利潤が確保できるからである。このイノベーション価値の増加が、低生産性企業の市場からの退出を遅らせることになる。現在、企業が損失を計上していたとしても、将来、もしイノベーションに成功すれば、輸出によって大きな利潤を確保できる。それを期待して、低生産性企業が損失に長期間耐える行動が生まれる。その結果として、貿易自由化が低い生産性の企業の存続を助長し、産業全体の生産性を下げてしまう可能性がある。この結果は、イノベーションの頻度が高い経済ほど発生しやすい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

特許政策の研究については当初の予定通りに進行した。査読付き学術雑誌への論文の掲載に向けて、得られた結果の背後にある仮定や妥当性について整理・再検証した。その結果、目標としていた査読付き学術雑誌への掲載が決まった。

貿易政策の研究は、当初の計画以上に進展している。2019年度の研究計画では、技術伝播(模倣)のみを考慮した理論モデルの下で、貿易自由化の産業生産性への効果を測ることを目標に据えていた。しかし、査読付き学術雑誌への論文掲載のため、改訂作業としてイノベーションを考慮した分析を前倒しで行った。これにより、イノベーションの頻度が高い経済では、貿易自由化が低生産性企業の退出を遅延させるという新しい結果を得た。

今後の研究の推進方策

イノベーションと技術伝播を考慮した貿易政策の分析は終えているので、その結果を論文にまとめ、査読付き学術雑誌への掲載を目指す。さらに、企業がFDI(海外直接投資)を実施するかどうかの意思決定と企業の生産性分布の関係について研究を進め、分析結果がまとまり次第、研究報告を進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた消耗品が安価で購入できたため少額の次年度使用額が生じた。
使用計画として現在進めている研究論文の英文校正が必要になるため、その費用に充当する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Technology diffusion, innovation size, and patent policy2019

    • 著者名/発表者名
      Kishi Keiichi
    • 雑誌名

      European Economic Review

      巻: 118 ページ: 382~410

    • DOI

      10.1016/j.euroecorev.2019.05.012

    • 査読あり

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公開日: 2021-01-27  

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