研究課題
本研究の内容は①「環境経済学の父」であるA.V.クネーゼの環境経済理論を再構成すること、および②水資源管理やエネルギー問題についての事例研究(フィールドワーク)を行うことである。①については、次の2本の論文執筆に向けて、資料の収集、整理、分析等の準備を進めた。一つは、クネーゼの水資源管理を起点とし、水管理組合の導入によって宇沢弘文の社会的共通資本の数理モデルをアップデートする論文である。クネーゼに影響を受け、ルール水管理組合による水資源管理をモデル化した成果と、コモンズ的組織による社会的共通資本の管理をモデル化しようとした宇沢の成果を組み合わせる。もう一つは、クネーゼが70年代に取組んだ物質収支アプローチを再検討し、経済学史の文脈に位置付ける論文である。物質収支アプローチをより明確に経済思想史に位置付けるために、カップの社会的費用論、都留重人の素材と体制という枠組みを補助線として導入する。②については、2019年9月に実施したフィンランド調査の成果を整理した投稿論文が2020年9月に受理され(中澤高師・西林勝吾「フィンランドにおける使用済み核燃料処分場問題―原子力発電所新設との関係に注目して――」『環境と公害』)、2021年9月に公刊された。また、2022年3月にこれまで実施してきたドイツ、ルール地方の水管理組合による水資源管理の調査を成果物としてまとめ、公表した(西林勝吾・渡辺重夫・寺林暁良「ルール地方の水管理組合」『ドイツ研究』)。
3: やや遅れている
2021年度はコロナ禍に見舞われ、予定していた海外・国内調査を実施することができなかったため。
当初の計画であったドイツを中心とした、水資源管理、再生可能エネルギー、放射性廃棄物処分に関する現地調査、およびA.V.クネーゼが在籍していた未来資源研究所(Resources for the Future:ワシントン)への訪問は、コロナ禍の動向を見つつ慎重に検討したい。学史・思想史系の論文執筆については引き続き注力し、今年度中に海外ジャーナルに2本投稿できるよう、作業を進めていく。
コロナ禍の影響で、予定していた海外・国内調査が実施できなかったため。海外、国内調査旅費や資料購入、論文投稿料などに使用する。
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ドイツ研究
巻: 56 ページ: 61-66
環境と公害
巻: 51 ページ: 56-62
巻: 51 ページ: 52-55