研究課題/領域番号 |
19K13665
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
植松 良公 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (40835279)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 偽発見率 / 検出力 / ファクターモデル / スパース性 / バイアス修正 / ノックオフ |
研究実績の概要 |
2019年度の研究実績は大きく分けて以下の2つである. 1.ウィークファクターモデルの推定理論の確立 多くの経済・金融時系列データは,従来のファクターモデル(ストロングファクターモデル)の枠組みで扱うのが適切でないような「弱い」ファクター構造を持つことが指摘されてきた.この性質を反映したモデルが,ファクターローディングにスパース性を仮定したウィークファクターモデルである.このモデルの推定量は直交性とスパース性を同時に満たす必要があるため,従来の手法では効率的な推定は難しかった.そこで我々は,Uematsu et al.(2018)のSOFAR法を適用することで,従来の主成分に基づく推定量よりも有効なSOFAR推定量を提案した.さらに,このSOFAR推定量の収束レートなどの理論的特性を明らかにした. 2.ウィークファクターモデルの推測理論の確立 上記のSOFAR推定量は,スパース性を誘導する正則化の影響でバイアスを伴うため,漸近正規性を満たさない.そこで本研究では,KKT条件からSOFAR推定量のバイアスを修正したバイアス除去済みSOFAR推定量を提案した.これは各点で漸近正規性を満たすため,従来のt検定が可能となる.しかしこれだけでは,ローディング行列全体のスパースパターンについて推測はできない.そこで,行列の各要素に対してt統計量を用いた多重検定を考えることで,行列全体のスパース性に関する偽発見率(FDR)をコントロールする手法を提案した.さらにこの手法が漸近的に高い検出力を持つことも示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べた通り,2019年度は2本の論文を執筆した.これらは現在海外の専門雑誌に投稿中である.また,これらの研究に基づいて2019年度中には4件の国際学会での研究報告を行った.さらにこれらの研究に加えて,現在は定常時系列データに対するノックオフ法による偽発見率コントロールの手法の研究を進めている.このように,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在は,定常時系列データに対するノックオフ法による偽発見率コントロールの手法の研究を進めている.これは,離散フーリエ変換した時系列データを独立系列とみなした上で,Fan, Sharifvaghefi, Lv, Uematsu (2020) で提案されたIPADの考え方を応用したファクターモデルに基づくノックオフ生成法である.今後はこの理論構築と,シミュレーションや実データを用いた実証分析を進めていく予定である.今までのところ,高次元時系列データに対する偽発見率コントロール手法は提案されていないため,非常に重要な研究課題と考えられる.
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