研究課題/領域番号 |
19K13668
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 祐太 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80745290)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高頻度データ / 高次元共分散推定 / Malliavin解析 / graphical Lasso |
研究実績の概要 |
本年度は、高次元高頻度データの精度行列(共分散行列の逆行列)に対する統計推測を行うための漸近理論を整備した。 まず、高頻度データをセミマルチンゲールの離散観測データとしてモデル化する状況を想定し、その場合の共分散行列にあたる二次共変動行列の推定量が何らかの方法で得られている設定を考える。このとき、その推定量をインプットとするweighted graphical Lassoによって得られる精度行列の推定量の性質を調べた。すなわち、行列作用素ノルムの下での一致性や、de-biased versionが漸近混合正規性を得るためにインプットの共分散推定量が満たすべき条件を整理した。通常考察される、精度行列がスパースである状況に加えて、金融高頻度データへの応用を考慮して、データがファクター構造を持ち、残差過程の精度行列がスパースであるような状況にも適用可能な形で理論を構築した。 次に、上で構築した抽象的な漸近理論を、二次共変動行列の推定量として実現共分散行列を利用するケースに適用した。精度行列の推定量の一致性には実現共分散行列に対する集中不等式が、de-biased versionの漸近混合正規性には実現共分散行列に対する高次元混合正規近似が必要となる。前者は標準的な議論により確認できるが、後者の確認のためにはMalliavin-Stein型の議論が必要となり、そのためにセミマルチンゲールの係数過程にMalliavinの意味での滑らかさを課す必要が生じた。 最後に、人工データを用いた数値実験により、ここで開発したサンプル数が無限に大きい状況を想定した漸近理論が、有限標本においても有効に働くことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、高次元高頻度データの精度行列に対する統計推測を行うための統計理論の整備が完成したため。
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今後の研究の推進方策 |
精度行列はデータのネットワーク構造と関係があるため、精度行列に対する統計推測を通じてデータのネットワーク構造を解析することができる。そこで、本年度に開発した統計理論を実際の金融高頻度データに適用することで、ネットワーク構造の解析を行う。また、精度行列以外の統計量に対しても、高次元の設定での統計推測を可能とするような理論の開発を引き続き進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:2020年初より発生した新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、当初予定していた出張のキャンセルや、納品の遅延を考慮して予定していた備品の購入をいくつか見送ったため。 使用計画:新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年度も引き続き在宅勤務が奨励されると予想される。そのため、研究室に保管していた高頻度データの解析を自宅でも行える環境が必要となるため、そのための備品の購入(ストレージや計算機等)を行う。
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