2019年度は、データの一部が欠損している状況下でのコピュラモデルの推定方法を提案した。社会科学ではデータの欠損は頻繁に生じるため、欠損データに対するコピュラモデルの推定方法を初めて確立したことの学術的価値は高い。データの欠損メカニズムにはMissing at Random (MAR)を仮定した。提案の推定方法はカリブレーション推定の一種である。この研究成果をまとめた学術論文は、Journal of Multivariate Analysis (SCIE該当、2018 Impact Factor = 1.029)に掲載された。 2020年度は、データの一部が欠損している状況下でのコピュラ回帰の実行方法を提案した。既存のコピュラ回帰は、欠損値のない完備データを想定して構築されていた。本研究では、データの一部がMARになっているという現実的な状況を想定し、コピュラ回帰の実行方法を提案した。その際、前年度の研究成果を踏まえてカリブレーション推定を応用した。この研究成果をまとめた学術論文は、Journal of Multivariate Analysisに掲載された。 2021年度は、因果推論に関する研究を行った。因果推論のモデルを構築する際、重要なポイントが2つある。第一のポイントは、処置のとり得る値の範囲である。第二のポイントは、どのような種類の処置効果を推定のターゲットとするかである。本研究では、これら2つのポイントに関して極めて一般性の高いアプローチを確立した。本研究のアプローチは、2019~2020年度に採用したカリブレーション推定と本質的に類似している。この研究成果をまとめた学術論文は、Quantitative Economics (SSCI該当、2019 Impact Factor = 1.271)に掲載された。
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