研究課題
本研究では、主に、製品普及過程における消費者間の相互作用、とりわけ社会的学習の役割について分析を行った。とりわけ、他者の言動等の情報の伝達を目的としてつくられたわけではなく、したがって、不正確で断片的な伝達の仕組みを、インフォーマルな学習の仕組みと呼び、それが私的情報を社会全体に拡散させる上でどのような役割を果たすのかを検証した。具体的には、日本で2013年末に発覚した冷凍食品の農薬混入事件を取り上げ、ローカルな小売店舗での品揃えの観測を通じて、人々が健康被害の発生確率を学習し、製品の購入を再開する過程をモデル化し、企業の売上回復にインフォーマルな社会的学習がどのような役割を果たしたかを検証した。推計に当たっては、製品バーコードレベルの購買履歴を記録したスキャナー・パネルデータを用いて、消費者が、自分が訪れた小売店の商品棚の状況から当該製品の売れ行きについて主観的な認識を持ち、それによって健康被害が起こる確率についての信念を更新するベイズ学習モデルを推計した。その結果、第一に、期間中に問題企業の製品の購入を再開した消費者(「再開者」)は、そうでない消費者(「非再開者」)と比べ、インフォーマルな仕組みがもたらす情報への感応度(社会的学習の強度)と、過去の公開情報から蓄積した印象を忘却する度合いが平均的に高いこと、それらの度合いについて、再開者の間の多様性は非再開者より大きいことがわかった。これらの結果から、本研究は、製品普及過程においてインフォーマルな仕組みによる消費者間の社会的学習が一定の役割を果たしていること、また、こうした社会的学習においては、学習者が多様であることが役立っていることを示し、製品普及過程における消費者間の相互作用の一様態を明らかにすることに貢献した。
Sato, Masahiro, Rui Ota, Arata Ito, Makoto Yano, “Social Learning after a Product-Harm Crisis,” 経済産業研究所DP検討会, 2020年2月28日
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RIETI Discussion Paper Series
巻: 20-E-092 ページ: 1-32