研究課題/領域番号 |
19K13675
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
若森 直樹 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (50770921)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 合併 / 企業結合 / 補完性 / Compatible Mergers |
研究実績の概要 |
本プロジェクトは、(i) 企業間のシナジー(相乗効果)の源泉を探り、(ii) そのシナジーが企業間の協力行動や合併・買収などの企業行動にどのような影響を与えるか、そして (iii) シナジーが政策をデザインする上でどのような意味を持つのか、の三点について実証分析を通じて明らかにすることである。その目的を達成するため、二つの事例に着目する。一つ目の事例は、日本の公共調達における特定建設工事共同企業体である。日本の公共調達では「2社以上の企業が一つの共同企業体としてオークションに参加できる」という制度があり、企業の属性データを用いてどのような企業共同体内にシナジーが存在するのかを探りつつ、望ましいオークションデザインについて考察する。二つ目の事例は、 公正取引委員会(及び競争政策)が存在しておらず合併が頻繁に起こっていた戦前の電力産業に着目することで、合併の相手企業を選ぶ要因を探ることである。
一つ目の事例に対しては、1年目の研究活動を通じてデータセットの構築を行い、2年目に分析を開始したが、各企業のデータが十分に足りていなかったため、さらに有資格者名簿を各種のwebsiteからスクレイピングするためのコードを書き、データの充実を図った。
二つ目の事例に対しては、共同研究者である岡崎哲二氏、大西健氏と共に論文「Compatible Mergers: Assets, Business Areas, and Market Power」を執筆し、社会的に望ましい合併は有形・無形資産が補完的な合併であるが、残念ながらそのような点は合併の意思決定には影響を与えておらず、地理的近接性のみが重要な合併の要因になっていることを明らかにした。昨年度Journal of Law and Economics誌に投稿を行い、改定要求を頂いたので、現在改訂に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つ目の戦前の電力産業のプロジェクトは論文を投稿し、改定要求を得る段階まで達しており、当初の計画以上に進んでいると考えられる。その反面、1つ目の公共調達プロジェクトは、現在分析を再開しているものの、予定より遅れている。そのための、2つの事例研究において若干の差はあるものの、総じて、現在おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
戦前の電力産業プロジェクトは英文査読誌(Journal of Law and Economics)から既に改定要求を頂いているので、受理(accept)に向けて引き続き努力していきたい。また、公共調達プロジェクトは現在分析を行っており、こちらに注力して遅れを取り戻したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のために当初計画していた出張(学会発表)がすべてオンライン開催となってしまったために、次年度使用額が生じてしまった。2021年度の旅費や、研究の分析を加速するためにリサーチアシスタントなどを雇用する予定である。
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