研究実績の概要 |
本プロジェクトは、企業間のシナジー(相乗効果)の源泉を探り、そのシナジーが企業間の協力行動や合併・買収などの企業行動にどのような影響を与えるか、さらに(仮にシナジーが存在するのであれば)政策をデザインする上でシナジーはどのような意味を持つのか、の三点について実証分析を通じて明らかにすることである。そのために二つの具体的事例に着目して研究を行った。一つ目の事例は、日本の公共調達における特定建設工事共同企業体で、もう一つは戦前の電力産業である。
一つ目の事例は「2社以上の企業が一つの共同企業体としてオークションに参加できる」という制度を生かして企業間のシナジーを探るプロジェクトであり、企業の属性データを用いてどのような企業共同体内にシナジーが存在するのかを探りつつ、望ましいオークションデザインについて考察してきた。特に、1・2年目の研究活動を通じてデータセットの構築を行ってきたため、理論モデルをベースにしたデータ分析を行ってきた。
二つ目の事例は、公正取引委員会(及び競争政策)が存在しておらず合併が頻繁に起こっていた時期であり、実際にどのように合併相手を探していたのかについて研究を行ってきた。共同研究者である岡崎哲二氏、大西健氏と共に論文「Compatible Mergers: Assets, Business Areas, and Market Power」を執筆し、社会的に望ましい合併は有形・無形資産が補完的な合併であるが、残念ながらそのような点は合併の意思決定には影響を与えておらず、地理的近接性のみが重要な合併の要因になっていることを明らかにした。Journal of Law and Economics誌に再投稿を行っていたが、残念ながら掲載されないことになったため、現在改訂を行い次の英文査読付き雑誌への投稿準備を進めている。
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