研究課題/領域番号 |
19K13690
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
白井 大地 東北学院大学, 経済学部, 講師 (90823675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マクロプルーデンス / 財政政策 / 過剰債務 |
研究実績の概要 |
本研究は過剰債務問題が生じているもとで財政政策の効果を分析することが目的となっている。2019年度は分析に必要な理論モデルの構築及び、シミュレーションアルゴリズムの開発を行った。 開発した理論モデルは借入制約や有限責任制約が局所的にバインドするため、数値的に導出される変数毎の政策関数にはkinkが生じてしまう。こうした問題に対応するための方法のサーベイを進め、近年研究が進んでいるゼロ金利制約においてモデルを線形近似せずに完全に非線形のまま解く解法が応用可能であることが分かった。ゼロ金利制約は、ゼロ金利になる前から、ゼロ金利になったときに政策関数にkinkが生じる。一方で本研究では借入制約と有限責任制約の二つの制約が異なるタイミングでバインドするため、政策関数の非連続性がより複雑となる。既存の方法を拡張、アルゴリズムを修正し、シミュレーション分析を進めることができた。 資本構成(債務量)の違いによって、政府支出の増加や法人税の減税といった、財政政策の乗数の違い、メカニズムの考察を進めた。債務が一定水準を超えると、最大限借入可能な債務まで一気に借入を増やす閾値が存在することを示し、その閾値が財政政策による変化をシミュレーション分析によって明らかにした。大きな負の生産性ショックが生じると、永続的に停滞が生じることを示した。過剰債務比率がさほど大きくない状況のもとでは、政府支出の拡大によって、過剰債務削減を進める効果が生じることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的における、 (a) 債務の買い取り、法人税減税、企業への補助金、財政支出といった財政政策オプションと企業の資本構成の変化を明示的に考察、 (c) 債務水準の量と停滞の関係に注目した分析、 を進めることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ワーキングペーパーの執筆を進め、研究会や学会での報告を通じて意見交換を行い、研究の改善を進めていく。また、(b) 救済策と民間企業の借入の交渉プロセスとの関係の分析を進めていくとともに、過剰債務問題と財政政策の関係に関する実証分析が可能になるように、データベースの構築を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍の影響により学会・研究会参加予定がキャンセルを余儀なくされたことが大きい。また、当初支出を予定していたMicrosoft関連の支出が今年度途中より大学が包括契約を結んだことにより支出する必要がなくなった。 次年度は前年度の研究成果を研究会・学会報告による意見交換をすることで研究の改善を進める。また、未使用分は、実証分析のためのデータベース作成のため研究補助の人件費に充てる。
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