最終年度に関しては、生産性ショックや富の再分配ショックに伴い過剰債務が蓄積し長期負債の元本が永続的に減らなくなる「過剰債務(debt-ridden)」状態に陥る可能性を示す景気循環モデルを新たに開発した。過剰債務企業は借入制約が厳しくなり十分な運転資金の調達ができなくなる非効率的な状態が永続する。金融危機によってこうした過剰債務企業が相当数出現すると不況が長期化するメカニズムを明らかにした。研究成果はKeiichiro Kobayashi and Daichi Shirai “Debt-Ridden Borrowers and Persistent Stagnation" としてまとめ学術雑誌に投稿している。論文はCIGS Working Paper Seriesにて公開されている.
研究期間全体を通じて実施した成果をまとめると、 1)富の再分配ショックや生産性ショックによって、過剰債務が生じる可能性を示したこと。債務水準の高まりによって、借入制約が厳しくなり、借入が困難になることで停滞が生じるメカニズムを考察した。2)政策介入無しでも時間を通じて、債務問題が自然と解消するような状況のもとでは、法人税減税が効率的であることがわかった。税負担の軽減を通じて、利潤が増加し、債務返済が促進されるため、債務問題の解消が早期化する。一方、支出拡大政策はクラウディングアウト効果を通じて利子率が上昇するため、債務問題がむしろ悪化する。3)一方、債務水準が大き過ぎて、債務が永続的に高止まりするような状況においては、財政支出拡大政策が企業の最適資本構成(最適債務比率)を変化させることで、債務返済を進める効果を持つ。 以上のように、不況期に債務問題を伴っている場合、政府当局が景気刺激策として財政政策を実施する場合は、債務問題の状況に応じて、適切な政策を選択する必要があることが分かる。
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