研究実績の概要 |
本研究の課題は、一国と地域ごとの人口動態を同時に説明する理論モデルを構築し、そこから少子高齢化や地方の過疎化などの問題に対しての政策的な含意を得ることである。研究代表者の先行研究として、Goto and Minamimura (2019)がある。この研究では、世代の設定が子どもと大人の2期間で、かつ、子どものときには何も経済活動は行わないと仮定していた。そのため、老年期を明示的に考慮していないことから、高齢化のような人口動態上の重要な問題を分析できていなかった。また、モデル内での主体の意思決定が静学的なものになっており、貯蓄のような動学的な意思決定を扱えていなかった。そこで本研究では、Fukumura. et al. (2019)を参考に、Goto and Minamimura (2019)を、老年期を明示的に考慮し、かつ、大人期から老年期に移動する際に一定確率で死亡するようにモデル設定を変更した。これにより、貯蓄を決める動学的な意思決定を扱えるようにし、また、死亡確率を変化させることで高齢化(長寿化)の影響を明示的に分析できるようになっている。
Fukumura, K., Nagamachi, K., Sato, Y., and Yamamoto. (2019) “Demographics, immigration, and market size”, Japanese Economic Review, https://doi.org/10.1007/s42973-019-00023-w
Goto, H., and Minamimura, K. (2019) “Geography and Demography: New Economic Geography with Endogenous Fertility”, Japanese Economic Review, Vol. 70, pp. 537-568
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