4つの研究課題は論文としてまとめられ、国際学術誌に公刊された。特に(3)の研究は、これまで別々のものと考えられていた多国籍企業の利潤移転行動と立地行動の関連を突き止めた点で意義が大きい。企業内の中間財取引にかかる移転価格が現地での最終財の販売価格に影響することにより、現地子会社の直面している競合他社との価格競争にも影響を与える。多国籍企業はこの価格競争を有利なものにするように子会社の立地を選択する。貿易費用が低く企業内取引=利潤移転が活発な場合には、常識に反して税率の高い国に製造業子会社が集中することがわかった。低い法人税率が必ずしも製造業拠点の集積を促すものではないという新しい視点である。
|