研究課題/領域番号 |
19K13695
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
森 大建 九州産業大学, 経済学部, 講師 (20779623)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情報の非対称性 / 環境政策 / 環境税 / 数量規制 / セカンドベスト |
研究実績の概要 |
研究初年度は,企業が保有する私的情報の非対称性に注目した研究に取り組んだ。規制当局が企業の私的情報を把握できるレベルは,企業によって異なると考えることができる。すなわち,環境政策の対象となる支配的企業と政策の対象ではないフリンジ企業がそれぞれ持つ情報の不確実性は同質的ではないと考えられる。したがって,初年度の研究では,規制当局と企業間に存在する情報の非対称性のレベルが企業によって異なることを表す数理モデルの構築に専念した。 数理モデルによる計算の結果,政策対象である支配的企業の総限界削減費用と限界被害の大きさが等しい場合,数量規制と比較して課税政策が効率的となることが明らかとなった。また,規制対象企業の不確実性が相対的に大きい場合,数量規制を実施する方が厚生損失の期待値が小さくなる。その一方で,非政策対象企業の不確実性が大きい場合には,課税政策の実施が望ましくなることが明らかとなった。 今回の結果はあくまでも理論分析による結果であるため,今後は実証的な観点から結果について再考することを考えている。また,政策対象企業と非政策対象企業の不確実性が異なる場合,規制当局がそれぞれの私的情報をどれだけ正確に把握できるかという点が政策決定に影響すると考えられる。現在は不確実性を費用関数のパラメータとして扱っているが,このパラメータをより詳細に設定することも今後の検討課題として考えている。また,一律政策だけではなく,混合政策も考慮することで,より実行可能性の高い政策と実施条件を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的分析は段階を追って着実に進んではいるものの,研究の最終目標である学術雑誌への投稿スケジュールが不透明であるため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,数理モデルにおいて情報の不確実性に関する扱い方をさらに深く考慮していきたい。不確実性の表現がさらに柔軟になれば,セカンドベストな環境政策の実施条件についてもより精度の高いものを提示できる可能性があるため,不確実性に関する知見をさらに深める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の投稿が年度をまたいだため,次年度使用額が発生した。当該金額については,論文翻訳料として使用予定である。
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