本研究課題では、排出権取引制度や環境税など代表される市場メカニズムを活用した環境政策の経済評価のための分析フレームワークの構築及び実際の政策評価を行った。一点目の課題として、米国の火力発電所に対する二酸化硫黄規制(US Acid Rain Program)に関する実証研究を進めた。排出量取引制度下における企業の投資や排出量取引に関する動学的な意思決定モデルを構築し、実際のデータを用いてモデルのパラメタを推定する方法を提示した。また、環境税などの代替的な制度に関するシミュレーション分析を行い、制度の効率性改善につながる手法について検討を行った。当研究は国際学術誌から査読の上改定要求を受けており、現在再投稿に向けて準備を進めている。
二点目として、環境税がエネルギー効率性に与える影響に関する実証研究を行った。経済学において、特定のインプット価格上昇に直面すると、そのインプットの利用効率性を高める形で技術進歩を進めるという「Induced innovation」という理論がある。この話を環境政策に適用すると、カーボンプライシングを行うことで企業は高いエネルギー価格に直面し、その結果としてエネルギー効率性を高めるという可能性が指摘される。この理論について実証的に評価するべく、インドネシアの製造業のデータを用いて分析を進めた。本論文は2021年の欧州産業組織論学会の年次大会(49th EARIE Annual Conference)にて発表を行い、コメントやフィードバックなどを得た。
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