研究課題/領域番号 |
19K13701
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
池田 晃彦 京都先端科学大学, 経済経営学部, 講師 (20825799)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新興国 / 為替相場制度 / 固定相場制 / 金融政策 / 資産価格 |
研究実績の概要 |
2019年度は、開放経済のニューケインジアンモデルであるDevereux et al. (2019) において、新興国の特徴を追加するとともに各種の為替相場制度や金融政策を導入し、海外金利ショックに対する政策的対応を検討した。当初は輸入中間財依存度が高い状況で固定相場制が借入制約を緩和する効果を中心に調査していたが、多くの場合その効果は小さいことが示された。そこで、同じ設定の下で海外の金利ショックに対応するための金融政策の効果を測定することに重点を移すこととし、特に実質為替レートや担保資産価格維持を考慮した場合の効果を測定した。シミュレーション分析の結果、実質為替レートに反応する金融政策がショックの影響を拡大する傾向がある一方、担保資産価格の維持を考慮した金融政策は、海外の金利ショックの影響による借入れの困難を緩和しうることが明らかとなった。 以上と並行して、新興国の景気循環の原因の研究、および金融危機防止のための国際政策協調に関する研究も行った。前者では、DSGEモデルに学習効果を組み込んだモデルを新興国のデータに当てはめて推定を行った。その結果、学習効果が新興国の景気循環にとって重要な役割を果たしていることが明らかとなり、本研究をまとめた論文は国際学術雑誌 Review of World Economics に掲載予定となった。また、後者では、担保制約を導入した開放経済モデルにおいて、国家間での外貨準備の融通政策の効果を検討した。結果として、協定相手国として景気後退の確率と規模が十分に異なる国を選び、かつ取引額を十分に大きくした場合には参加国の経済厚生が改善しうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
為替制度・金融政策の研究については、当初予定していた分析の一部が完了し、高い輸入中間財依存度や借入制約を含むモデルにおける各政策の効果の主要部分が明らかとなった。ここまでの結果については日本経済学会2020年度秋季学会において発表予定である。また、新興国の景気循環に関する研究が学術雑誌 Review of World Economics に採択されたほか、借入制約下での国際政策協調に関する研究についても学会発表やディスカッションペーパーでの公表を行った。これらの結果やモデル設定も為替制度・金融政策の効果を検討する上で利用可能である。以上の観点から、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に用いたモデルを引き続き利用して金融政策の他のパターンについても検討した上で、日本経済学会2020年度秋季大会において発表を行い、そこで得られるコメントをもとに修正を行う予定である。特に、2019年度は借入制約が有効化している場合の政策効果を中心に検討してきたが、2020年度は必ずしも有効でない場合も含めたケースを考慮した研究を進める。さらに、金融政策だけでなく為替介入に関しても明示的に盛り込んだモデルを作成することを検討している。並行して行っている国際政策協調に関する研究についても引き続き分析作業を行い、学術雑誌への投稿に向けた準備を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表を予定していた国内および海外の学会がいずれも開催中止となったため、旅費を次年度以降分に充てることとした。また、シミュレーション分析に利用するパソコンの購入を予定していたが、2019年度分のシミュレーションについてはすでに保有しているもので対応可能であったため購入を見送った。今後の状況により購入を再検討する予定である。
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備考 |
京都大学経済研究所にて国際政策協調に関する以下のディスカッションペーパーを公表した。 - Ikeda, A. (2020). "Currency Swap Agreements and Financial Crises in Small Open Economies," KIER Discussion Paper No. 1033.
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