研究実績の概要 |
令和3年度中、担保資産価格を考慮した金融政策の効果に関する研究については、これまでの線形モデルを拡張して非線形のモデルとし、予備的貯蓄などの効果も盛り込む形で修正した。この結果、線形のモデルの場合と同様、固定相場制に近い金融政策が厚生を下げやすい一方、資産価格に反応する金融政策が厚生改善につながる場合が多いことが明らかとなった。この結果について、日本国際経済学会(東京大学, オンライン, 10月)において発表した。さらに、交易条件の外生的変化の重要性も指摘されたことから、この点もモデルに導入する作業を行った。結果として、国の債務残高の状況に応じて交易条件の影響が異なることが示されて、データの示す交易条件の外生的変化の影響を一部再現することができた。この結果について、国際貿易セミナー(新潟県立大学, オンライン, 11月)および学内発表(2月)にて発表を行った。得られたコメントをもとに、現在モデルのさらなる修正とデータへの当てはまりの検証を行い、執筆を進めている。 金融危機防止に関する国家間政策協調に関する研究については、国際学術雑誌に投稿し、査読コメントをもとにさらなる修正を行っている。特に、為替介入に関する先行研究をふまえてこれまで以上に現実の契約に近い形にモデルを再構成した。また、これまでの発表の中で指摘されてきた各国間の相関も考慮できる形の修正を加えた。この結果、協定参加国間の相関が小さい場合に政策協調の効果が大きくなること、相関が大きい場合にも、ほとんどのケースで参加国の厚生が改善することが示された。現在、この修正されたモデルを利用して改訂作業を行っている。
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