令和5年度は金融危機防止に関する国家間政策協調に注目した研究の執筆・改訂作業および交易条件と借入制約が新興国経済に与える影響に関する研究の発表を行った。金融危機防止に関する国家間政策協調に関する研究は、前年度末の令和5年3月に行った投稿後にモデルの修正に関する査読コメントを受け、それをふまえた改訂を行っている。特に、これまで政策協調のモデル化において政策の発動を外生的な条件によって決定される仮定を置いていたが、この点に関する指摘を多く受けた。そこで、発動要件を外生的にせず、借入制約が有効化した場合に発動されるという設定に変更し、分析の修正を進めている。このモデルにおいて前回の投稿の際と同様に各国間の景気循環の連動等の要因を加味して修正を施したものを再度投稿し掲載を目指す予定である。交易条件と借入制約が新興国経済に与える影響に関する研究については、“Monetary Policy and Capital Controls in Commodity Exporting Economies”として原稿にまとめた。ここでは、条件付きの借入制約の下で交易条件に関する変動が生じた場合について考察しており、インフレ率等に対する影響が前提条件によって異なりうることを示している。同内容を令和5年10月に明治大学にて開催された日本国際経済学会第82回全国大会にて発表を行ったところ、討論者および参加者からは、モデルの設定については一定の理解を得られたが、結果の頑健性および政策効果についての疑問点を指摘された。現在、これらの意見を参考に追加の分析作業および国際学術雑誌への投稿に向けた作業を進めている。
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