研究課題/領域番号 |
19K13703
|
研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
広瀬 浩介 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (00822008)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 産業組織論 / 製品差別化 / 損失回避 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、損失回避的な消費者を明示的に扱い、製品戦略を含めた企業の戦略的行動を明らかにすることである。また、標準的な選好をもつ消費者を仮定した場合と比べ企業間の競争は阻害されるのか、損失回避バイアスをもつ消費者は企業から搾取され得るのか、といった競争政策や消費者保護政策につながる政策的含意を得ることを目指している。 特定の商品に対して参照点を持つ損失回避的な消費者を前提としたZhou (2011) のモデルを、企業が水平的差別化(製品特性) の度合いを内生的に選ぶことが出来る環境に拡張し、特定の商品に対して参照点を持つ損失回避的な消費者が存在することで、企業は標準的な選好をもつ消費者のみを前提とした場合よりも、より多くの消費者の好みに合った製品を市場に投入することを示した。またHeidhues and Koszegi (2008) で採用されている期待を元に参照点を形成する損失回避的な消費者を前提としても、限られた設定では同様の結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特定の商品に対して参照点を持つ損失回避的な消費者を前提としたZhou (2011) のモデルにおいては、一定の結果が得られている。一方で、Heidhues and Koszegi (2008) で採用されている期待を元に参照点を形成する損失回避的な消費者を前提とした場合には、モデルの扱いやすさの問題から、両企業が極端に製品差別を行っている特定の状況から差別化の程度を緩めるのかといった状況のみの分析に留まっており均衡を特定するまでに至っていない。他方、新たな関連研究においては国際学会において発表を行うまで進行しているものもある。ため、(3)とした。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定していた拡張のみでなく新たに、標準的な消費者とは異なる特徴をもついくつかの消費者像を検討する。例えば、Herweg, Muller, Weinschenk(2017)で前提としている市場の中で顕著な特性(価格や製品特性)を持っている商品に引き付けられる消費者などを前提とし、モデルの扱いやすさを保ったまま均衡を導出することが出来ないか、そして政策的な含意を導く比較静学まで行えないか、試行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)が「0」より大きくなった理由として、2月と3月に予定していた海外での発表がCOVID-19の影響で中止になったことがある。研究発表の機会が得られるようになった場合に、使用する予定である。
|