最終年度までの研究においては、LCCに関する提携に注目し、LCCの提携が競争に及ぼす影響について分析してきた。その主な成果として、LCC同士が競争を激しく行っていた路線内において、そのLCC同士が提携すれば、利用者が利便性の向上と引き換えに、運賃の上昇に直面する可能性が生じることを示した点である。一方で、FSCとLCCとの提携では、逆に運賃の低下をもたらす可能性もあることを示した。 最終年度では、提携と暗黙の共謀の関係について分析も実施した。航空産業では同じ航空会社同士が多くの路線において対峙するマルチマーケットコンタクト(MMC(Multi-Market Contact))がみられる。この状況が航空産業の競争を弱めていることが過去の研究からも示されてきた一方で、MMCの共謀効果と提携の関係に関する分析は行われていなかった。そのため、米国の航空産業において、コードシェア協定や委託を含む提携とMMCの共謀効果との関係について分析を行い、提携を通じてMMCの共謀効果が高まることを示した。 これらの結果の意義については、新型コロナにより大きな損失を受けた航空産業において高まることが予想される。コロナにおいて損失を被った航空会社は提携やM&Aを通じ、経営をより効率化する可能性がある。M&Aの進む航空会社においては、MMCの程度も上昇している。この状況において、本研究の成果から、将来的に提携の拡大、M&Aの進行により航空会社間の暗黙の共謀の効果が高まる可能性が示唆される。そのため、提携およびM&Aの可否については、現在までの提携の状況も踏まえながら判断する必要があると考えられる。
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