研究課題/領域番号 |
19K13709
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研究機関 | 京都経済短期大学 |
研究代表者 |
石村 雄一 京都経済短期大学, 経営情報学科, 講師 (30783534)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 廃棄物政策 / 広域処理政策 / NIMBY問題 / 計量経済分析 |
研究実績の概要 |
最初に、日本の全市町村における一般廃棄物の処理状況に関する調査をおこなった。調査では、分析の際に必要となる一般廃棄物の発生量、処理費用、広域処理の実施状況などの情報を得ることができる統計資料を収集した。その後、得られた統計資料をもとに一般廃棄物の広域処理と処理費用に関するデータベースの構築に取り掛かかった。 次に、構築したデータベースを用いて一般廃棄物の広域処理の費用削減効果に関する分析に取り組んだ。この分析では、廃棄物処理の広域化がもたらす規模の経済性や範囲の経済性が、廃棄物処理費用に与える影響について明らかにすることを試みた。計量経済分析の結果、広域処理を実施している自治体ほど1tあたりの処理費用が約21%低い傾向にあることが明らかになった。また、人口規模が第1四分位群の広域処理を実施している自治体は、単独処理をおこなっている同規模の自治体に比べて処理費用が約32%低いことが明らかになった。これは規模の経済性によって人口規模や排出規模が小さい自治体ほど、廃棄物処理の広域化が処理費用の削減に効果的であること示している。さらに本研究では、複数の処理過程で広域処理を実施している自治体は、1つの処理過程だけで広域処理を実施している自治体に比べて処理費用が約25%低い傾向にあることが明らかになり、範囲の経済性が処理費用の削減に寄与していることが示された。 なお、この研究についてはRISSのディスカッションペーパーとして公表し、海外ジャーナルへの投稿に向けて最終の修正作業をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、おおむね当初の計画どおり順調に進んでいる。これは、多くの研究者から適切なアドバイスをいただけたことや、所属研究機関における事務部局からの研究遂行に対するサポートをしていただいたおかげである。 また、調査を円滑かつ効率的に開始できるように、事前に調査先となる自治体のリストアップ、申請書の作成、データ入力のためのフォーマット作成といった準備を完了させていたことや、資料の入手先について各行政機関に対して調査を実施していたことなどが、研究課題を順調に進めることができたことにつながっている。しかし、年度末においては新型コロナウイルスの影響で、研究会や自治体へのヒアリング調査が一部中止となった。 なお、次年度の研究についても、作業にかなり膨大な資料とデータを扱うこととなり、相当の手間と時間が必要となることが予測されるが、研究スケジュールに基づいて正確かつ着実に作業を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
廃棄物処理施設の立地における地域的特徴、および立地地域に対する政策的特徴について明らかにするために、①どのような地域において広域処理のための廃棄物処理施設が立地する傾向にあるのか、②どのような地域において、処理施設の受入れに対するどのような地元政策がおこなわれる傾向にあるのかについて、計量経済モデルを用いて明らかにする。分析では、全国の市町村を対象とし、処理施設の種類(広域処理、焼却、リサイクル、最終処分)、財政的要因、政治的要因、政策的要因、地域的要因、地理的要因、公共施設の立地状況などといった要因が、政策決定や立地決定に与える影響について推定する。 また、環境経済学のトップジャーナルである「Journal of Environmental Economics and Management」や「Ecological Economics」といった海外論文誌への投稿に向けた論文の執筆作業に着手する。
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