2021年度は当初計画の通り、「Availability」に関しての追加的な議論や分析を行い、研究結果をまとめた。本研究の目的は、特定のタバコ製品に対する供給制限がタバコ消費に与える潜在的な効果を予測することである。従来研究のような年齢・場所(公共施設等)・時間(日曜日の販売規制等)に着目した規制の分析は行わない。本研究では、仮にあるタバコ製品を永久に禁止した場合、その愛好者は喫煙を減らすだろうかという、根本的な問題意識を持った分析を行う。現状において現実にそのような政策を施行できる可能性が高いわけではないが、近年では国際的に電子タバコの禁止等の措置が取られるなど類似した規制政策がみられる。したがってタバコの供給規制の潜在効果の検証は有用であると考える。本研究では、東日本大震災による工場の被災を契機とした製品廃盤によって、タバコ購買者の製品選択や購買量がどう影響を受けたか分析を行った。その結果、製品選択も購買量も統計的・政策的に有意な効果が見られた。しかもその効果は数年間にわたり持続した。これらの結果に基づき、論文を改訂し、専門家による研究結果に関する議論を行い、フィードバックを得た。具体的には、これまでのように震災による廃止銘柄の購買者を分析する代わりに、計画された銘柄廃止によって影響を受ける消費者購買行動を分析することで、地震による製品の供給停止と消費者行動の外生性を確認した。また、短期と長期の購買行動を追加分析することで、結果の頑健性を確認した。追加で行った分析と結果はワーキングペーパーとしてまとめられた。最終年度ではあるが、論文の改訂は継続し、学会での発表も積極的に行っていく予定である。
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