これまで経済学の市場設計の分野では統一選抜制度に関する理論研究が盛んに行なわれてきたが、実際に起こった入試制度の変更事例を用いた実証研究は非常に少ない。さらに、日本の旧制高校の入試制度に関しては、近年の経済学の市場設計の分野で発展した理論的な枠組みにより分析を行った研究はこれまでなかった。分析の結果、能力主義的な入学者選抜はエリート層の地域構成に影響を与えたが、それと同時に、同じ教育資源を用いてより多くの優秀な人材を育成した可能性も分析から明らかになった。この結果は、能力主義的選抜と教育機会の平等との間にはトレードオフが存在したことを示している。
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