前年度において、人的資本と国債蓄積及び政治経済学的な政策決定を同時に組み込んだモデルの変更が余儀なくされ、本年度では経済成長のエンジンとして人的資本の代わりに研究開発投資(とその補助金政策)を採用したモデルの作成と分析を行った。ただし研究開発補助金を政治経済学的な文脈(具体的には確率投票モデル)から分析したモデルも、国債発行で財源調達可能なモデルもともに存在しなことが分かったので、それらのモデル作りから行った。 前者では、2期間の世代重複モデルを想定し若年世代と老年世代の厚生の加重平均を政府が最大にするようなモデルを構築し、①厚生を最大にするような補助金の水準は状態変数に依存せず、また②どのような条件で内点解を持つか(つまり正の補助金が最適になるのか)に関する条件を解析的に得ることができた。加えて経済成長率を最大にする補助金政策と比較しその間の大小関係についても考察を行った。 後者では、連続型世代重複モデルを想定し研究開発への補助金の財源として国債による財源確保を認めたときに、その経済のダイナミックスと定常状態の性質について分析を行った。結果、定常状態を持つための条件(つまり定常状態で正の国債が成立する条件)とその安定性についてを明示的に示すことができ、高齢化の影響が定常状態と経済成長率に与える影響について分析することができた。 いずれの研究も一定の研究結果を得られた一方で、前者のモデルについては現在論文執筆の最中している一方で、後者のモデルでは必要な分析(具体的には定常状態での厚生や経済成長率を最大にするような政策に関する分析)がすべて終わっているわけではないため論文執筆の段階に至っていない。年度は超過してしまったが、早急にこれらの研究結果をまとめる必要があるため、現在論文の執筆と併せて引き続きモデル分析に取り組んでいる最中である。
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