研究実績の概要 |
本研究課題では、オンライン経済実験を用いて、「寄付金控除」による還付施策と「マッチング寄付」による上乗せ施策を比較した。両者は実質的に同じ寄付促進施策であるが、前者は減税で、後者は第三者機関の上乗せ寄付で、一定金額を寄付する際の自己負担額を下げて寄付を促す。行動経済学では、優遇額が同じでも施策の表現(フレーミング)の違いが異なる効果を生むと考えられてきた。本研究では日本人を対象に全国規模のオンライン実験を行い、海外の先行研究と同様に日本人においても、寄付金控除よりマッチング寄付の方が寄付行動を促進することを明らかにした。 2019年度及び2020年度の研究活動を通じて、「制度上、寄付金控除やマッチング寄付等の利用を人々に強制することができないことから、施策利用の自己選択を考慮した場合にそれぞれの施策の効果がどのように変化するか」という追加的なリサーチ・クエスチョンが得られた。2021年度に、この追加的なリサーチ・クエスチョンを検証するための経済実験を予定していたが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で平時の寄付行動が把握できないと判断し、2022年度に延期して実験を実施した。2,400名の実験データを取得して分析したところ、寄付金控除よりもマッチング寄付の方が寄付先に寄付される合計金額を上昇さえる効果は、自己選択を考慮することでより大きくなる可能性が示唆された。今後は、この現象を説明できる理論モデルの構築などを行っていく予定である。
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