本研究は、高齢期の経済状況について、直面するリスクや社会保障制度との関係を分析している。特に、介護と家族の変化、および自然災害のリスクに直面した際に、高齢者の資産や経済状況にどのような影響があったかを分析している。 3年目である2021年度は、2019年度に書籍として出版したオランダの介護保険制度と日本の介護保険制度を比較する研究を行った。当該年度はヨーロッパ15カ国の個表パネルデータと日本の個表パネルデータの整理を行い、実証分析を行なった。前年度の分析方法から、ヨーロッパ15カ国の福祉制度の枠組みについて改良が必要であったため、分析を再検討した。現在は、国際学術雑誌への投稿に向けて論文を執筆中である。 二つ目の研究として、自然災害がもたらす高齢者の主観的幸福度と経済状況への影響についての研究も行なっている。これは、東日本大震災の高齢被災者がどのような支援を受けたか、またそれにより主観的幸福度がどのように変化したかを検証している。その結果、男女で差があり、女性の高齢被災者は金銭的援助が主観的幸福度にプラスの影響を与え、男性に関してはそうとは言えないことがわかった。一方、被災者にとって家屋の倒壊状況が主観的幸福度に大きな影響を与えており、住宅という生活基盤・経済基盤の重要性が明らかとなった。これは、高齢者にとって住宅が資産の多くの部分を占めていることとも関連しているのではないかという点から再度分析及び論文の修正を行い、国際学術雑誌への投稿の準備をしている。
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