本研究では、消費課税(補助金)が地域別、および産業別に与えた影響についての効果について、動学的一般均衡モデルを用いた理論分析、および地域別および産業別の消費者物価指数のデータおよび都道府県別宿泊観光客数のデータを用いた実証分析の両方のアプローチを行った。 理論分析の成果としては、消費税と労働所得税のラッファー曲線の形状が異なる理由について、課税対象である消費の税率弾力性の違いが労働所得余暇の相対価格に起因することを示した。また、課税の動学的一般均衡分析の研究成果として、ロバスト制御理論を用いて、インフレ変動についての不確実性が大きくなる可能性を考慮した最適金融政策について分析し、その中において、累進的所得税制の累進度が大きくなるほど、不確実性の影響を小さくすることで厚生が改善することを明らかにした。併せて、貿易財と非貿易財が存在する小国開放経済ニューケインジアンモデルにおいて、消費課税と労働所得税の効果の違いについての分析を行った。 実証分析としては、日本の消費税増税(1989年、1997年、2014年)が産業別、地域別の消費者物価指数への価格転嫁の度合について、動学的効果を分析した。それにより、産業間の価格転嫁の度合が定性的に異なる一方、地域別の違いが比較的小さい(統計的有意ではない)ことが分かった。また、Go toトラベルキャンペーンを観光消費に対する定率補助金とみなし、2020年7月から9月において東京都を出発ないしは目的地とした旅行を対象外としたという制度を利用し、イベントスタディ差の差検定を行い、宿泊観光客数および新型コロナウィルス感染者数に与える影響を調べた。
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